角川ドワンゴ学園が運営するN高ならびにS高では、今年4月から「IT×グローバル社会を生き抜く“総合力”を身に着ける多様なスキルと多様な体験」のために専用のAIチャットシステムを導入。学習、課外活動の効率化を試みている。これに合わせて「生成AIによって創作は変わるか、変わらないのか」というテーマの下、『東京都同情塔』で第170回芥川龍之介賞を受賞した九段理江氏、名古屋大学大学院で人工知能・自然言語処理を研究する佐藤理史氏による特別講義を開催。その模様はWEB配信で生中継された。
ChatGPTに「生成AIは『文学』『文芸』へ、どのように活用できる可能性がありますか?」と問うと、①創作支援:テーマ、キャラクター、プロットの提案を行い、それにより作家は新しいアイデアや文体を試す、②文学分析:大規模に文学作品のテーマや象徴の分析を行い、時代や流行の変遷を追跡、③翻訳:複数の言語に翻訳、世界中の読者へのアクセスを広げ文化間の理解を深める、④新しいフォーマットの文学作品:読者の選択により物語が変化するインタラクティブな作品や、VRと組み合わせた体験型の文学を創出、という回答が示された。
『東京都同情塔』では主人公が日常的に生成AIを使う姿を描くため、九段氏自身もChatGPTを使用した。だが芥川賞受賞の記者会見で「『(生成AIを)5%使っています』と言ったら、いっぱい批判が来た」という。
佐藤氏は、「人工知能を研究するのは『人間の知能とは何だろう?』という根源的な問いから」だとして、AIは人がどういうものを面白いと思うのか分かっていないのではないか、と指摘。九段氏もそれを受け「知りたいという欲求、つまり好奇心をかきたててくれるものが『面白い』ということではないか」と語った。
さらに、「生成AIで創作は変わるか」という問いには、九段氏はあくまで作品に関係する資料であり、新作では馬に関する資料を用いたことと同種だとする。佐藤氏も「文学は画像や映像ほど生成AIの影響は受けず、特に変わらないのでは。(文学の面白さは)個人の主観によるところが大きい。客観性が担保できないところをどうリサーチするのか」と語った。
さらに、会場の学生から創造性を高めるために必要なことを問われ、九段氏は「高校生活をがんばってください」とエールを送り、佐藤氏も「自分が面白いと思うものをたくさん見て美意識を養い、価値判断に生かしてほしい」と助言した。
コメント