一般社団法人出版文化産業振興財団(JPIC)、一般社団法人版元ドットコム、株式会社カーリルは共同で、リアル書店の在庫情報をウェブ上で公開し、地域の図書館などとも連動させる「書店在庫情報プロジェクト」を始動。現在、京都府立図書館を始めいくつかの図書館から実証実験への参加希望を受け、準備を進めている。
プロジェクトについて、「KYOTO BOOK SUMMIT」の一環で11月9日に開かれたシンポジウム「図書館と著者・書店・出版社の未来について」の中で、JPIC・松木修一専務理事が概要を報告した。
同プロジェクトは、地域書店などの店頭在庫情報を、公共図書館の検索サービス、書評サイト、出版社サイトの商品情報などと結びつけ、こうした情報にアクセスした一般利用者がいる場所に近い書店の在庫を表示することで書店に誘客することを目指す。大手取次のトーハンと日本出版販売(日販)、出版社や書店向けシステムの開発・提供を行う光和コンピューターが協力する。
書店が店頭在庫の情報をWebで公開していれば、情報提供に同意することで自動的に情報を収集するほか、書店が在庫情報を定期的にCSV形式のデータで提供する方法、書店が専用ウェブサイトから任意の商品について入力する方法などを想定している。これにより、在庫管理ができていない書店でもベストセラーや文学賞受賞作など注目書籍の在庫有無を任意で登録することもできるようにする。
また、トーハンと日販の在庫情報を取り込むことで、在庫を開示していないリアル書店でも、検索した本の取り寄せ可否を表示することなども検討している。
このサービスは、公共図書館が地域書店と連携するツールとして注目されており、京都府立図書館が図書館から半径3キロメートルの書店在庫を開示する実証実験を行う。
カーリルは全国の図書館がWeb-OPACで提供する書籍の所蔵情報をリアルタイムに統合する技術を開発。同社が提供するサイトでは全国7400以上の図書館からリアルタイムの貸出状況を検索できるサービスを提供しており、「書店在庫情報プロジェクト」はこの技術を利用する。
書店人から期待のコメント
この取り組みについて、東京都書店商業組合副理事長の小川頼之氏(小川書店)と、東京都町田市で鶴川駅前図書館の指定管理者となっている久美堂代表取締役社長の井之上健浩氏は本紙に次のコメントを寄せた。
小川氏「韓国の図書館の目標には『書店の振興』があると聞いている。まさに我が意を得たり、と思う。図書館も書店も出版業界のフロントエンド。両者がネット上で手を携えてのこのプロジェクト、とても素晴らしいことだと思う。東京都書店商業組合青年部では全国の書店在庫が検索できる『全国書店案内』を運営している。また、電話にかわってネット上から書店に在庫問い合わせができる『本屋で本を探そう』アプリもある。我々は協力を惜しまない。このプロジェクトが新たな書店への送客ルートとして定着することを期待している」。
井之上氏「書店と図書館が手を取り合って地域の読者を増やすことができる素晴らしい取り組み。図書館のベストセラー予約者数は数百人になっており、自分の順番が廻ってくるのに何年もかかってしまうのが現状。その間に本への興味が薄らいでしまう可能性もある。『本を読みたい!』という熱量を下げずに読者の手元に本を届けることこそが、出版業界にいる我々の使命だと考える」。
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