独立系書店が生き延びるための“ウリ”やノウハウを紹介する連載第4回。東京・世田谷区で、書籍だけでなくさまざまなジャンルで売上を伸ばす、本屋B&B。その仕組みについて店長の伊藤淳さんに聞いた。
【市川真千子】
イベントを毎日開催
本屋B&Bは、 NUMABOOKS(代表:内沼晋太郎氏)と博報堂ケトル(代表:船木研氏)が共同経営する書店。2012年の創業当初から、著者によるトークショーなどのイベントを毎⽇開催し、店内で販売するドリンクを飲みながらゆっくり本を選べるという、従来の書店にとらわれないスタイルを確立している。
下北沢駅から徒歩4分、飲⾷店などが軒を連ねるBONUS TRACKの2階に店を構える。書籍在庫数は約2万冊、売場は40坪。従業員は社員、アルバイトを含め10人程度が運営に参加している。
書籍は大手取次のトーハンから仕入れているが、出版社直取引の本やリトルプレスが5割を占めており、売れ筋にこだわらず、スタッフが惹かれる、売りたいと思うものを自由に選書しているのが特徴だ。
イベントは出版社からの持ち込み企画もあるが、基本的に企画から交渉まで1イベントにつき1⼈が担当、集客につながるかを他スタッフと検討しながら進める。当⽇はスタッフが機材セッティングから受付などの運営を⾏う。コロナ禍でイベントの集客に苦しんだが、配信設備を導⼊するなど対策をいち早く取り入れた。
HPやSNSでの告知に加え、⽉1回以上イベントに参加かつ情報を希望するお客さんにメールマガジンを送付する体制を続けることなどで、集客が安定してきたという。今では来店と配信を合わせておおよそ100⼈以上、多いときで2000⼈ほど集まることもある。
多彩なジャンルで利益を上げる
毎⽇イベントを開催する意義について、伊藤さんは「“⼈が集まる”場所を作ることが⼤事」だと話す。「イベントがあれば天候に左右されず⼈が集まり、⼈が集まれば本が売れるきっかけになる」。イベント参加者が、登壇者が紹介した本などイベントにまつわるものだけでなく、休憩時間に何となく覗いた店内の新刊台や常設棚から本を買っていくという仕組みができている。
さらに、雑貨やアパレルなど、スタッフが厳選した商品のフェアを⽉1回程度は展開。その他、英会話や、本の編集者による講座開催、店内で本を⾒て回る際やイベント時のドリンク販売、映画や雑誌撮影の店舗貸しなど、売上のジャンルは多種にわたるが、主軸のイベントが売上の5割を⽀えている。
「書店のセオリーは“売れ筋の本を仕⼊れて売る”ことだが、僕らのような⼩さな店では、規模に応じた仕⼊れしかできず利益は限られてくる。利益を出すために、書籍以外にいろいろな“⾷いぶち”があるといい」と伊藤さんは話す。書籍以外で利益を上げていれば、書籍分野での⾃由な選書など、やりたいことが実現できるのだという。
配信設備のアップグレードやアーカイブの活⽤など「イベントはどこまでも利益を伸ばせる可能性がある」と話す。そのうえで「これからもスタッフ個⼈が惹かれる、⾯⽩いと思うものを⼤切にしていきたい」と今後について語った。
□所在地:東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 2F
□仕入れ:トーハン、出版社直取引、個人直取引
伊藤淳さん
カメラマンアシスタントから転職し、LIBRO池袋店に勤務。同店の閉店をきっかけにブックファーストへ就職、自由が丘店と五反田店の店長を務める。2022年、B&Bの求人に応募し店長として入社。
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