「『本の魅力を伝える人』を広義の『本屋』と捉えて話を聞いた」
梅田 蔦屋書店(大阪・北区)店長で文学コンシェルジュの北田博充氏が、書店業界復活のヒントや将来の可能性を探るべく業界内外の「本の魅力を伝える人」へのインタビューを掲載した『本屋のミライとカタチ―新たな読者を創るために―』(PHP研究所)を2月に刊行した。2016年、自身が代表を務める書肆汽水域から出版した『これからの本屋』以来8年ぶりの著書。
北田氏は取材に「普段から書店に足を運ぶ人だけを見て『もっと本を売ろう』とするには限界がある。どうすれば新しい読者が増えるかを問題意識としてずっと持っていた」と執筆の動機を語る。
本書について「書店や出版関係者による本はたくさん出ているけど、業界の内側の議論に終始してしまう。今は推薦本を紹介するインフルエンサーなども大きな影響力を持っている。業界内外を問わず、『本の魅力を伝える人』を広義の『本屋』と捉えて発信力ある人たちに話を聞いた」とし、未来読書研究所代表の田口幹人氏、小説紹介クリエイター・けんご氏らをはじめ、教育者、格闘家など「本の魅力を伝える人」が北田氏のインタビューに応じている。
多彩なイベント CCCも後押し
刊行月から3月にかけて、梅田 蔦屋書店をはじめ奈良、代官山、六本木の蔦屋書店や名古屋の書店でトークイベントを実施。対談相手には近隣の大型書店店長なども名を連ね、北田氏は「書店の競合は他書店というより、動画やSNS、ゲームアプリ、アミューズメントパークなどその他の娯楽かもしれない。本書は『新たな読者を創る』がテーマ。そのために同じ志を持つ人たちと協力していくことが重要」と意図を語る。
すでに読者からの感想も届き、「『本に関わるすべての人が本屋』という内容。一介の本好きだけど広義の本屋と言われてワクワクする」、書店員と思われる読者からは「店にいると抜け落ちてしまう視点、『本を読まない人をいかに取り込むか』という話。未顧客を連れてくるためのいろんなアイデアを学んだ」などの意見が寄せられている。
北田氏は「日本人の約半数が1カ月に1冊も紙の本を読まないという調査があるが、この半数を読者にするためのアクションが必要。本書には各書店が取り組めるヒントもある。本の魅力を伝える達人の言葉は本をあまり読まない人にもきっと刺さる。いろんな人に手に取ってほしい」と語っていた。
『本屋のミライとカタチ―新たな読者を創るために―』=四六判並製/264㌻/1870円(税込)
著者プロフィール
きただ・ひろみつ氏=1984年生まれ神戸市出身。大学卒業後、出版取次の会社に入社し、2013年には本・雑貨・カフェの複合店「マルノウチリーディングスタイル」の立ち上げに中心となって関わった。16年、退職と同時に出版社「書肆汽水域」を設立。同年カルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。二子玉川 蔦屋家電勤務時代には40の書店が出展した「二子玉川 本屋博」を企画・開催した。
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