７市の学習・教育状況に対応
兵庫県南東部の「阪神間」に位置し、大阪、神戸のベッドタウン、大阪国際空港の地としても知られる伊丹市。未来屋書店伊丹店（笹本誠店長）はJR伊丹駅直結、140店舗以上を擁するイオンモール伊丹2階に380坪で構え、ファミリー層を中心に児童書、学習参考書に強みを持つ。
学参歴20年の知識と経験
学参・辞書には35坪を活用し、在庫は約2万冊。売上は店舗全体の約8％、繁忙期は10％を超える。主要客層に合わせて小学参に注力するが、2002年のオープン以降、リピーターも多いことから、進学した固定客に対応すべく中学参、高校学参の品揃え強化も怠らない。
売場を担当するのはオープニングスタッフとして入社し、学参一筋の後藤貴子さん。施設の顧客吸引力に加え、参考書の品揃えや、後藤さんの高いスキルが評判で、同店には隣接する川西、宝塚、西宮、尼崎、さらに大阪の池田、豊中、拠点の伊丹を加え7市から問題集やドリルを求めて来店する。
伊丹市は公立志向が強いというが、大阪府池田市には大阪教育大附属の小中高各校舎もあるなど、教育熱が高い保護者らが広範囲から訪れ、後藤さんらスタッフは大阪、兵庫両県の学校状況の把握、受験情報の収集が求められる。
商圏の広さと、全学年万全を期す対応により、突出した繁忙期はなく、後藤さんによると「以前は春が学参シーズンという感じだったけど変わってきた。定期テストが終わる度に、結果が悪かったと準拠系を買いに来られる。また最近は夏休みの宿題が少ないようで保護者がドリルや問題集目的で来店する」という。3～4月は小学、4～6月が中学、11～12月が高校、7月と12月は全学年と、年間を通して学習書は活発な動きを見せる。
学習指導要領の新旧区分けには、棚上部に大きな看板を設置し、「〇年生用」、「新課程版」と明記。「看板は店長作成。どうすればわかりやすくできるか苦心した。先取りで新課程を購入して予習する人もいるけど、新旧混在して手にしている人もいるので『何年生ですか？』と声をかけている」と配慮を忘れない。
キャラクター頼みの学習に危惧
小学参の売れ筋は増進堂・受験研究社「特訓ドリル」、「5分間復習プリント」の各シリーズ、中学も同社の「自由自在」シリーズ。後藤さんは「参考書は断トツで『自由自在』。難関高校の過去問もしっかり網羅している」と推奨する。
高校は人気英語講師の『大学入試問題集 関正生の英文法ポラリス』（KADOKAWA）、『関正生のThe Rules 英語長文問題集』（旺文社）など。
高校入試の過去問題集は履正社高校、箕面自由学園高校といった進学校の動きが目立ち、大学入試シリーズ（赤本）は、私立では関西大学、近畿大学、国立では神戸大学が例年、売上を伸ばしている。
後藤さんは「今はキャラクターものが増え過ぎの感がある。勉強が苦手な子の入口としてはいいけれど、ずっと絵ばかりだと実際のテストで通用しない」と懸念し、「字の参考書を使えるようになるべきだし、私たちも良質の参考書を提案していきたい」と強調する。常に心掛けていることは「お客様一人ひとり、要望や適した参考書が違うので話をしっかり聞く」ことだという。
学参出版社に向けて「若い人は難しいゲームには夢中になって攻略本もよく売れる。勉強もクリアして次に進むところは似ているのにみんな勉強が嫌い。やらされている感があると思う。『勉強』というゲームの最強攻略本のような参考書を出してほしい」と期待する。
スタッフ、取引先との信頼関係で棚づくり
笹本店長は後藤さんの仕事ぶりについて「出版社と信頼関係を築いてよく勉強している。知識も十分で学参に関してはすべて任している」と太鼓判を押す。
後藤さんは「当店は30分ごとに売場をチェックするルールだけど、店のみんなが自分の担当でないコーナーも整頓するなど意識の高いスタッフが揃っている」とし、「なにより店長の助言が心強い。ほかの業務に追われて棚が疎かになったとき、『売りたい熱意が伝わらない』と指摘されたことがあった、その通りだった。店長、スタッフ、出版社、皆さんに助けられて良質な売場ができている」と感謝を示す。
今年の展開については「共通テストがまた大きく変わると聞き、衝撃だった。新教科に『情報』が入り、プログラミング言語も一般的でないものを使うなど受験生は大変。私たちにできることは限られているけれど、少しでも勉強しやすいように売場から情報を発信していきたい」と話していた。
【堀雅視】
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