株式会社パルコで出版事業を行っているPARCO出版は、電子書籍の発行を増やしているが、売上集計や印税計算などの手間が煩雑になったことから、昨年末に株式会社光和コンピューターと株式会社メディアドゥが提供するクラウド型電子書籍管理システム「PUBNAVI」の利用を開始。年度末の支払通知を一瞬で処理できるなど効果を実感しているという。
電子書籍化が効果発揮
PARCO出版は、同社のエンタテインメント事業部コンテンツ事業担当出版チームが刊行する出版物のレーベル名。部門設立は1974年 7月1日で、来年設立50周年を迎える。体制は編集者と営業あわせて計7名。年間30点ほどの新刊を刊行するが、このうち半分ほどはパルコが実施する展覧会の写真集や図録などアート本。そのほか、10点ほどがレシピ本、残りがタレント本などバラエティー本だ。
写真集や図録などビジュアル書籍が多かったこともあり、電子書籍化はしてこなかったが、2019年に著者からの要望で、ぬまがさワタリ著『絶滅どうぶつ図鑑』を初めて電子書籍化。すると、これが思いのほかヒットした。
「やってみると電子書籍化はそれほどハードルが高くなく、数字も悪くありませんでした。以前は『紙の本の売れ行きに悪影響があるのでは』との懸念もありましたが、逆に紙書籍の売れ行きが落ちてきても電子版は売れ続けるという効果もありました」と同チームの田中雅之業務推進マネージャーは手応えを語る。
そこで、紙での重版が難しいレシピ本などを中心に電子化を推進。2020年~22年で30点ほどの電子書籍を発売した。21年2月に刊行したタナカカツキ氏のサウナエッセイ『サ道 ととのいの果てに』は、紙版発売から2カ月後に電子版を発売したが、紙版が2刷7000部に対して電子版が2割ほどと、電子版ではこれまでの最多配信を記録。
紙版と電子版の同時刊行はまだ難しいというが、今年7月に刊行した大橋由香著『ストウブまかせの野菜たっぷりレシピ』は紙版の発売直後に電子版の配信を開始したことで、「紙と電子の刊行時期が近いと、電子が見本になって紙版の売れ行きにも結び付くようです」との相乗効果も感じた。
「PUBNAVI」で「助かる」と実感
ただ、電子書籍化を増やしたことで、昨年は35点程度だった電子書籍の配信数が46点に増加。電子書籍の流通を任せている株式会社クリーク・アンド・リバー社(C&R社)からの売上報告をExcelで管理していたが、アイテム数と著者数が増えたことで、著者への売上報告に支障をきたすようになった。
そこで、C&R社に相談したところ「PUBNAVI」を紹介され、昨年12月に契約。当初のExcelデータ取り込みなどはサポートを受けたため、「ローンチに関しては苦労なくできました」という。そして導入後初めて支払通知を作成した今年3月は、「作業は一瞬にして終わり、これは助かると実感しました」と田中マネージャー。
いまは電子版の半数ぐらいがレシピ本で、アート本の電子化にはまだ着手していないが、田中マネージャーは「はやく100タイトルにはしたい」と意欲を示す。また、世界的に市場が拡大するコミック分野にも、デジタルファーストなら参入が可能と興味を示している。
PARCO出版(株式会社パルコ エンタテインメント事業部コンテンツ事業担当出版チーム)
電子書籍:1974年7月1日
発行人:宇都宮誠樹
所在地:〒150-0045東京都渋谷区神泉町8-16渋谷ファーストプレイス
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