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【2023年 出版業界の重大ニュース】ブックセラーズ&カンパニー、CVS配送撤退、無人書店…

 人々が以前の生活スタイルを取り戻すことによる外出や旅行の増加、そして諸物価高騰などの影響を受け、出版市場は大きく低迷した。このことが出版流通の転換を加速させ、大手取次や書店などによる改革向けた動きが顕在化した年だった。出版業界の重大ニュースを紹介する。

【星野渉】


紀伊國屋書店・CCC・日販 ブックセラーズ&カンパニーを設立

 紀伊國屋書店とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、日本出版販売(日販)は10月、共同出資で新会社ブックセラーズ&カンパニーを設立した。年間販売額2000億円に達する書店グループを背景に、書店と出版社が仕入数を決定する直仕入スキームを実現することを目指す。

 参画書店の代表として出版社と直接取引契約を締結し、契約出版社の商品に関する仕入業務を集約。また、書店での購入者の拡大や購入数の増加を目指し、参画書店が共同実施する販売促進の企画や、共通アプリなども視野に入れた書店横断型のサービスを実現させて、読者の利便性向上に繋げる。

 11月に紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで開いた出版社向け説明会で宮城剛高社長は、出版社に対して契約出版社の書籍すべてを対象とする「販売コミットモデル」(全銘柄包括契約)と「返品ゼロモデル」(単品買切売買契約)を提案する考えを示し、「参画する書店の全取引の半分を、3事業年度を目安として『販売コミットモデル』による直仕入に切り替えていく。加えて、全取引の1割を『返品ゼロモデル』として買い切る」などと見通しを示した。


トーハンが取引条件見直し視野に出版社と交渉開始

 トーハンが4月に東京・文京区のホテル椿山荘東京で開いた「2023年度全国トーハン会代表者総会」で、近藤敏貴社長は取次事業が4期連続赤字との見通しを示したうえで、今後、取次事業の構造的課題を改善するため、出版社に対して「取引条件の見直しを視野に入れた相談をさせていただく」と取引条件見直しに踏み込む考えを示した。

 近藤社長は「取次事業は構造的な赤字状態に陥っており、これは異常な状態」としたうえで、「既存構造のままでは出版流通は成立しない。業界の収益構造そのものにメスを入れる必要がある。今後、当社はコストをまかなえていない出版社に対して、取引条件の見直しを視野に入れた相談をさせていただく」と強い口調で宣言した。


日販のCVS配送撤退明らかに、トーハンが引き継ぎ方針表明

 日本出版販売(日販)が全国3万拠点に及ぶコンビニエンスストア(ローソン、ファミリーマート)への雑誌配送から、2025年に撤退することが明らかになった。雑誌の販売不振によって、同社のコンビニへの流通は前年度で約32億円の赤字に陥っていることが原因だが、出版配送網の危機として大きな注目を集めている。

 一方でトーハンがローソンとファミリーマートへの雑誌配送を引き継ぐ考えを表明。しかし、同社の近藤敏貴社長は10月に開かれた京都トーハン会総会の席上で「当社も取次事業は10億円の赤字。これ以上、赤字を膨らませるわけにはいかない」とし、効率の良い店舗への集約や配送ルートの見直しなどを検討し、「出版社には条件をお願いすることになる」と述べた。

 この動きに対して11月、日本雑誌協会、日本書籍出版協会、東京都トラック協会は日販・トーハンに対して配送移行協議の円滑な調整を要望した。


大手出版社が8月からコミックスなどへのRFIDタグ挿入開始

書店での実証実験もスタート

 丸紅グループとPubteXを設立した講談社、集英社、小学館の3社は、8月以降に発売したコミックスや一部の文庫にRFIDタグの挿入を開始した。

 9月からは京都市の大垣書店Kotochika御池店=写真、横浜市の有隣堂伊勢佐木町本店で利活用の実証実験も始まった。

 出版物へのRFIDタグ挿入は、書店の入荷検品や棚卸、清算、返品などの業務を効率化することが期待されている。PubteXは1年半ほどの実験を経て、2025年の初頭には流通段階も含めた全工程での稼働を予定している。


大手取次が無人書店の実験開 「MUJIN書店」「ほんたす」

 トーハンは3月にグループ書店の山下書店世田谷店=写真=でNebraskaが開発した無人営業化ソリューションを利用した無人書店「MUJIN書店」を導入。売上が増加し経費が削減されるなど順調に推移していることから2店舗目となるメディアライン曙橋店にも導入した。

 一方、日本出版販売は9月に丹青社と連携し、東京メトロの溜池山王駅構内に無人書店「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」をオープンした。諸経費が高騰する中で書店の営業を可能にする新たな試みとして注目されている。

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