台湾文化部が主催する「2024年 台北国際図書展(2024 TIBE)」が、2月20日から同25日まで開催された。トーハンによると、同社が運営する日本出版社の展示エリア「日本館」も多数の来場者でにぎわい、テーブルを囲んで連日活発に商談が行われた。同社の近藤敏貴社長も会場を視察し、出版コンテンツに対する台湾社会の高い関心をあらためて確認した。
今回の出展国数は34カ国(23年比1国増)、出展社数は509社(同39社増)、来場者数は55万人(同4・5万人増)。「日本館」は会場フロアのうち、海外参加国としては最大規模のスペースで展開した。陳列棚には和書の翻訳出版用見本を約1000点展示し、見本出展出版社数も従来に比べて大幅に増加したという。
近藤社長の台湾滞在中には、台湾文化部・史哲部長、日本台湾交流協会台北事務所・片山和之代表ほか、各界要人との会談を重ねた。双方向的な翻訳出版ビジネスの活性化を促進するとともに、産業・文化政策面からも相互に学びあい、より活発な交流を目指すことで一致した。
また、「日本館」と隣接したドイツブースでは、国際ブックフェアの責任者とも面会。今年10月のフランクフルトブックフェアへのトーハン自社ブース出展を控えて、近況を交換した。
トーハン発表による懇談の要旨は次の通り。
〈台湾 文化部〉
トーハン・近藤社長
「能登半島地震では台湾から被災地へ多額の寄付金をいただき、日本の一員として深く感謝している」
「TIBEは昨年を超えるにぎわいだと感じる。来場者や出展企業の熱意だけでなく、台湾政府のコンテンツ産業振興への関心も高く、大変素晴らしい。海外も視野に入れて政府と民間が的確に連携している状況を、日本の出版界や政府関係者にもぜひ伝えたい」
「日本にも世界に通用するコンテンツが無数にあるので、TIBEのような国際イベントは日本でも実施したい」
「日本と台湾は互いに親近感があり、文化的にも交流のハードルが低い。当社および台湾東販のネットワークで、台湾発IPの展開もお手伝いしたい」
台湾 文化部・史哲部長
「台湾では、オリジナル作品を生み出し、国内だけでなく海外にも発信していくことが、政官民の共通認識だ。文化部主催のTIBEは非常に良いチャンスになっている」
「海外でも受け入れられるIPの創出や、映像化などの二次展開には、政策的支援が必須と考えている。台湾では、翻訳支援の予算措置や、官民合弁によるオリジナルIP創出も進めている。デジタル化もコンテンツを広めるチャンスと捉え、台湾や日本の出版社との連携も拡大していきたい」
〈日本台湾交流協会 台北事務所〉
トーハン・近藤社長
「TIBEを視察し、出版産業における台湾の政府と民間の連携の強さを改めて実感した。文化部の史哲部長からは、政官民が『多様なコンテンツの創出と、世界を視野に入れた普及展開』という同じベクトルを共有していることが大きいとお聞きした」
「日本でも、出版産業、特に書店業の持続可能性を高めるために、政官民のあるべき連携の形を早急に考えていかねばならない状況にある。台湾社会の取り組みは非常に参考になる」
「今後、当社としてもコンテンツを通じた日台交流に一層貢献していきたい。また、台湾をはじめ諸外国の優れた点を吸収し、日本の出版文化の発展に貢献していきたい」
日本台湾交流協会 台北事務所・片山和之代表
「台湾政府は、文化部(日本の文化庁に相当)がコンテンツ産業に非常に力を入れている。コンテンツを通じた国際的な文化交流や、コンテンツ産業の振興的な面まで、幅広く政策を展開している」
「当協会の広報文化部では、文化交流以外にも日本研究支援事業を行ってきているが、この事業の一環として、台湾の大学等に日本の本を寄贈する取り組みも続けている。また、近年は台湾側との共催で、日台の漫画家がお互いに大震災復興支援やコロナワクチン提供などに対する感謝を込めた色紙の巡回展『漫画の絆 台日色紙展』なども実施した」
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