著者の高殿氏「一番欲しかった賞」
関西の書店員、販売会社社員ら有志で結成した「Osaka Book One Project」(OBOP)は、第11回「大阪ほんま本大賞」に、高殿円氏の『グランドシャトー』(文春文庫)、特別賞に、はるき悦巳氏の『じゃりン子チエ34巻』(双葉文庫)を選んだ。
同賞は、大阪が舞台、または大阪に所縁ある著者の小説(文庫)の中から「大阪人に薦めたい」1冊を選び、「大阪からベストセラーを」の合言葉のもと2013年に創設。近畿圏の書店で店頭展開し、販売収益の一部を活用して児童福祉施設に図書を寄贈することも特徴のひとつ。10年間で約860万円分の図書を寄贈している。
大阪市都島区の通称「京橋エリア」に実在するレジャービル「グランシャトー」をモデルにしたキャバレーが登場する同作は、娯楽施設全盛期の高度経済成長期が舞台。主人公のルーは義父との結婚を迫られ、キャバレー「グランドシャトー」のナンバーワンホステス真珠の家に転がり込む。二人は姉妹のように仲良く暮らすが、ルーはかなりの収入を得ているはずの真珠が下町の長屋で質素に生活することを不審に思い、彼女の過去を探る。文藝春秋の作品を紹介するサイトでは「『男の作った城』キャバレーが街と女の生き様を照らす『ひかり』の物語」と紹介されている。
爆売祈願に高殿氏登場予定
著者の高殿氏は文化通信社の取材に「私にしては珍しく『評価されたい』と願った本。読んでほしい人に届く大阪ほんま本大賞は、心からうれしく、とても欲しかった賞。文化や歴史を残す一端となり、今生きている人たちの日々の糧になる作品になってほしい」と受賞の感想を話した。
OBOPの活動については「私も2019年から、新しい本が入らない災害地の学校図書室に新刊を寄贈する活動を続けている。今回、賞をいただき大阪でそのような活動に関われることは光栄。本がつなぐご縁の力が、将来を担う大切な子どもたちの助けになるよう願っている」とコメントを寄せた。
7月25日から近畿圏の書店約900店で、3万5千部を目標に大賞と特別賞両作品の展開がスタートする(24年1月末まで)。26日には大阪・北区の大阪天満宮で恒例の販売決起大会「爆売祈願」を実施。高殿氏も来場するという。
OBOP実行委員会は「今後もこの取り組みを通じて、地方からのベストセラー創出、社会貢献に取り組んでいく」としている。【堀雅視】
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