株式会社朝日新聞出版10月5日、科学雑誌『Newton』を発行する株式会社ニュートンプレスの全株式を取得したことを発表した。ニュートンプレスは朝日新聞グループのグループ会社となった。
ニュートンプレスは1974年に教育社出版サービスとして設立。81年に『Newton』を創刊、カラーイラストや写真、そして第一線の研究者に取材したレポートで、40年以上にわたって刊行を続けてきた。
ニュートンプレスは2017年、民事再生法の適用を申請し、20年に手続きが終結。今後は朝日新聞グループのサポートで、事業基盤の安定化に向け再生計画を推進していく。
ニュートンプレスの代表取締役は引き続き高森康雄氏が務め、これまで同様の編集方針で科学専門の出版社として成長を目指す。また、同社の商品やブランドと、朝日新聞出版の企画力や営業力を活かして、科学に関心を持つ読者に向けた商品やサービスの開発を進める。
ニュートンプレス・高森康雄代表取締役のコメント
朝日新聞出版は、その前身である朝日新聞出版局から続く長い歴史の中で、業界における誇るべき実績とノウハウ、規模を有しています。
その経験はニュートンプレスにはないものであり、今後の活動において非常に重要な要素となると考えております。
例えば広告獲得力、営業力、コンテンツの企画能力、そして書店との深いコミュニケーションスキルにより、ニュートンプレスの成長も促進されると考えています。
また朝日新聞の読者層はニュートンプレスのターゲットと重なると考えており、新聞読者層からのユーザー獲得により新たな成長を実現することも期待しております。
同時に、朝日新聞グループはデジタルトランスフォーメーション(DX)など、時代のトレンドにも積極的に対応しており、共に成長する環境ができるという期待もあります。
一方で、ニュートンプレスの40年以上にわたる科学雑誌の編集ノウハウや、民事再生後に磨き上げた製造プロセスの工夫を共有することで、互いに有益な事業環境を築くことが可能であると確信しています。
この協力関係は両社にとって大きな機会となります。出版業界における存在感を強化するため、今後の発展に向けて共に努力してまいります。
朝日新聞出版・市村友一代表取締役社長のコメント
朝日新聞出版の前身である朝日新聞出版局は、かつて『科学朝日』という月刊誌を発行していました。その最大のライバルが『Newton』でした。『科学朝日』は1941年創刊ですが、発行部数が最も多かったのは『Newton』の創刊で科学雑誌ブームが起きた80年代後半ごろです。ライバルであると同時に、編集者同士は取材先でよく会って話す間柄で「みんなで科学業界を盛り上げよう」という交流があったそうです。
『科学朝日』は1996年に『SCIaS(サイアス)』と名前を変え、2000年に休刊しました。休刊時には科学を愛する多くの方々から叱咤激励をいただき、その中には『Newton』関係者の声も含まれていました。
その後、朝日新聞出版が発足した2008年から刊行を始めた「科学漫画サバイバル」シリーズは累計発行部数が1400万部を超え、15年にわたって科学を愛する多くの子供たちに読まれてきました。
このような経緯を経て、ニュートンプレスと朝日新聞出版は手を携えることになりました。これから、日本中の科学ファンがワクワクするようなコンテンツを一緒にお届けしてまいります。
経営面では、朝日新聞出版が持つ営業ネットワークを活用し、ニュートンプレスと全国の読者や企業、そして書店や販売業者の方々とのコミュニケーションをサポートしていくほか、新たな書籍やイベントを共同で企画してまいります。『Newton』の魅力あるコンテンツのデジタル展開や科学ファンのコミュニティーづくりも検討していきたいと考えております。どうか、ご支援を頂けると幸いです。
朝日新聞社・中村史郎代表取締役社長のコメント
『Newton』は日本の科学界の宝です。雑誌・出版界が順風満帆とは言えないなかでも、高品質の誌面で読者の期待に応え、ブランドを守り抜いてきたニュートンプレスの皆様に、心からの敬意と感謝を表します。
ニュートンプレスは再生計画を着実に遂行し、安定した事業基盤を再び築く途上にあります。さらなる成長に向けて、朝日新聞グループが全面的にサポートしてまいります。
朝日新聞社は2029年に創刊150年を迎えます。私たちの企業価値の源泉は、質の高いジャーナリズムを提供し続けることです。いま、メディアが直面する難局を乗りこえるため、グループの一体感を強める改革に取り組んでいます。2008年に朝日新聞社から独立した朝日新聞出版はその中核となる存在です。そして今回、さらに『Newton』という高品質な情報を発信してきたメディアが新たな仲間として加わってくれることを心強く感じます。豊かなコンテンツ群が、私たちのグループの信用力により厚みをもたらしてくれると確信しています。
今後もお客さまの知的好奇心に応え、グループの成長に資する投資を続けてまいります。
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