慶應義塾高等学校(神奈川県横浜市、阿久澤武史校長)は、同校の卒業生を招いて講演などを行う「協育プログラム」を随時実施している。9月25日の放課後、本紙「The Bunka News」を発行する文化通信社の山口健代表取締役を囲み、座談会「OBと語ろう『先輩の本棚』からのメッセージ~活字文化の未来を語ろう」が開かれた。当日はインフルエンザの蔓延で学級閉鎖の措置がとられるなか、山口氏が参加した生徒に出版業界の現状などを説明。後半には「こんな書店がほしい」というアイデアを生徒から募り、全員で話し合った。
活字文化推進事業を展開する文化通信社は今年7月、著名人50人と本のプロが若者に薦める書籍を紹介するギフトブックカタログ『先輩の本棚』(文化通信社発行、B5変型判172㌻、1100円・税込)を、同校の全校生徒、教職員に向けて2700冊寄贈した。その縁もあって、同校から協育プログラムへの登壇を打診され、卒業生の山口氏が応じた。
当日は、同校日吉協育棟のコミュニケーションラウンジに集まった生徒を前に、「本、書店、新聞といった活字文化の未来を語る」をテーマに座談会を開催。前半は山口氏が日本国内における書籍・雑誌、書店に関する最新動向などを説明。海外の書店事情なども紹介すると、生徒らは興味深そうにメモをとっていた。
後半は、生徒とともにブレーンストーミング。生徒があったらいい、行ってみたいと考える書店についてメモした紙を貼り出し、それをもとに話し合いを進めた。
生徒からは「一つの分野に特化した書店がいい。洋書ばかりを売っている書店だったり、同じ趣味の人が集まる書店も面白そう」という意見の一方、「とても幅広い分野の本を取り扱っている書店に行きたい」とか、「やっぱり在庫、品ぞろえが多い書店がいい」という意見も出た。
また、「分野を超えた本を取り扱っている書店がほしい。例えば、書店が一つの主題(テーマ)を設定し、それについて対立する意見を書いた本が並んでいるイメージ」と提案した。
ほかにもユニークなアイデアが相次いだ。「その場で売らない書店」を書いた生徒は、「書店に1冊だけある本は、売れてしまえば次に来た人がその本を見ることはできない。ほしい本をレジで予約してもらい、それをまた棚に戻せば、書店も自分たちが売りたいという本だけをずっと並べておくことができる」と話した。「ブックカバーだけの書店」と書いた生徒は、「自分が本を買うときは表紙とタイトル、目次くらいしか見ない。ブックカバーだけならば、(買いたい本は配送してもらうので)そもそもたくさんの本を仕入れる必要もない。その分、たくさんのジャンル、さまざまなタイトルを置いてほしい」と求めた。
「校閲の注文ができる書肆(しょし)」があればいいという生徒は、「本を読んでいると、原文のかな遣いや外国語などの引用で、間違っていることに気がつくことがある。それを相談できるような書店、書店員さんがいれば」と話すと、ほかの生徒が「自分は17年生きてきたが、まだ本の間違いに気がついたことがない。まだまだ勉強が足りない」と応じた。
そのほか「人と出会わない(じゃまされない)書店」や「著名人の本棚を再現したような書店」、「オーナーのこだわりがつまっていて、その世界観が表現されている書店」などのアイデアが披露され、話は尽きなかった。
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