ブロンズ新社は、3月14日に写真絵本『シロツメクサはともだち』(文・写真/鈴木純 )を出版した。それを記念し、4月20、21日と26~28日の5日間、同社のギャラリー青銅RoomJで写真パネル展を行い、4月19日には著者である植物観察家・鈴木純さんによるメディア向け植物観察会とギャラリートークを開催した。
【水本晶子】
NHK「ダーウィンが来た!」に出演するなど、多くのメディアから取材を受け、注目を集める植物観察家・鈴木純さんによる植物観察会にはメディア関係者など約20人が参加した。
鈴木さんは「植物観察では植物の名前とその植物がどうやって生きているのかを知ることが大切」と話し、オオイヌノフグリやカタバミなどの身近な植物の観察方法を教えた。
さらに、「植物は動かない。だから自分から近づくしかない。虫のように植物と同じ視点になることが大切」と話し、地面に腹ばいになりながら参加者に説明する姿も見られた。
ブロンズ新社のギャラリー青銅RoomJに場所を移して行われたトークイベントでは、鈴木さんが植物観察家を名乗るに至った経緯やこれまでの活動のほか、今回の絵本の制作話など、スライドを見せながら語った。
鈴木さんは「まずこの本で描きたかったのは、植物への近づき方。人間の視点を捨てて違うものになって近づくことが大切。この絵本ができあがるまでに4000枚ほど撮影したが、これまでたくさん観察してきたシロツメクサでも新しい発見がたくさんあった」と話した。
さらに、「制作の早い段階で植物のことを正しく伝えることと、わかりやすく楽しいことを両立させるのが非常に難しいことに気がついた。鳥や虫の場合、自らアピールするような動きをするので見せ場を作れるが、植物にはそれはない。移動もせず、動かない植物の写真を飽きずに32ページずっと読み続けてもらうというのは大変だと思った」とし、「これは植物観察のガイドをやっている時と同じ悩み。派手に動き回らない植物を相手に集中して楽しんでもらうことは難しく、いろいろな工夫をしている。この本も4年4カ月かけてテーマを模索しながら作り上げた」と鈴木さん。
最後に「この絵本を読んだ5歳の娘が庭に生えたシロツメクサの葉を集めて白い紙に貼り、この本のページそのままに再現してくれたのがうれしかった。こんな風に本を読んだ人の行動に何かしら表れるきっかけになればそんなうれしいことはない。植物に近づいて‶自分なりに楽しもう″というメッセージが伝われば」と話した。
終盤の質疑応答では「どのページが見せ場か」と聞かれ、鈴木さんは「どのページもアピールできるページになっていると自信を持って言える」と答えた。
同会場で行われたパネル展では絵本に使用した写真のほか、収録されなかった写真や鈴木さんがこれまで撮りためた植物の写真を展示。鈴木さんの植物観察に欠かせない「七つ道具」の実物展示もされた。
鈴木 純(すずき・じゅん)氏
植物観察家・植物生態写真家。1986 年、東京都生まれ。東京農業大学で180 種の樹木を覚える授業を受け、葉っぱの一枚一枚に個性があることに衝撃を受け、植物観察の日々が始まる。現在は、まち専門の植物ガイドとして活動を続けている。著書に『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい』(雷鳥社) 、娘の成長エッセイ『子どもかんさつ帖』(アノニマ・スタジオ)、監修絵本に『はるなつあきふゆのたからさがし』(矢原由布子著/アノニマ・スタジオ)、NHK 「ダーウィンが来た!」の取材協力と番組出演など。
コメント