角川春樹事務所は9月25日、東京・千代田区のザ・キャピトルホテル東急で、創立27周年記念祝賀会と第15回角川春樹小説賞授賞式を併せて開催した。コロナ禍で4年ぶりとなる華やかな祝宴に多くの関係者が集まった。
最初に、角川春樹社長があいさつ。開口一番、「27年も存続するとは思わなかった」と率直な気持ちを吐露。社業は良いときが一瞬で、ほとんどが苦しかったと語った。
昨年11月末に1カ月強入院し、「あと1週間(来院が)遅かったら、死んでましたよ」と医師に告げられたと話し、後継者のことや会社の今後について初めて真剣に考えたと明かした。今年1月の誕生日には、小学5年生の息子から「生きる力」という書を渡され、それを会社の神前に貼って毎日声に発していると話した。
また、息子からは創立記念に合わせて「道」と書いた色紙をもらい、「感動した」とし、「生きる道なんだな」と思い、「4年ぶりに皆さんと会えることをわくわくしながら待っていた」と感慨を込めて語った。
次に、書籍編集部の原知子部長が角川春樹小説賞選考の経緯を説明。昨年11月18日に締め切られ、344作から一次選考、二次選考ののち、5月19日の最終選考が行われ、東圭一さんの『奥州狼狩奉行始末』が選出された。
65歳の新人作家が誕生
選考委員の一人、作家・今村翔吾氏が登壇し、選評を行った。今村氏は、今回から選考委員を担当、「第10回では希代の天才作家が生まれた」と自身が5年前に同賞を受賞したことを話し、会場の笑いを誘った。受賞作について、「バランスが取れている」点が選考委員の多くから評価されたこと、「狼狩奉行という特殊な設定で読者を引きつける、着眼点が優れている」と高く評価した。
受賞した東さんは現在65歳。応募者の平均年齢より高いが、今村氏は「これこそがこの賞が掲げる、年齢・性別・人種などにかかわらずに良い作品、おもしろい作品を選んでいることの証し」と話した。
東さんは、「賞というのは、将来有望な人を見つけて育てるという意味があると思う」とし、(若くはない)自身を選んでもらったことに感謝の意を述べた。今村氏や角川社長に「作家はとにかく書かないとだめ」と言われているとし、「どんどん書いていきたい」と今後の抱負を語った。東さんには、角川社長より賞状と記念品、副賞の100万円が贈られた。
乾杯のあと、紀伊國屋書店代表取締役会長兼社長高井昌史氏から祝辞が述べられ、中締めとして選考委員の一人である作家・北方謙三氏があいさつを行った。
角川春樹精勤賞の発表も併せて行われ、美人百花広告部の横井彩緒里さんが受賞した。
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