東京のJR中央線阿佐ヶ谷駅前で営業する書店「書楽」は今年1月で閉店することを表明しているが、大手取次トーハングループの株式会社八重洲ブックセンターが店舗を引き継ぐことが決まった。書楽の閉店後10日程度で八重洲ブックセンター阿佐ヶ谷店(仮)として再オープンする。
書楽は居酒屋などを営む株式会社戎が運営し、駅南口ロータリーにあるビル1階110坪で43年間営業を続けてきた。黒字は維持していたが長期的見通しが立たないと判断し閉店を決断したという。
後継書店が決まったことで、当初1月8日としていた閉店時期を1月31日に変更。八重洲ブックセンターはシステムなど最低限の改修を行い、2月中旬にはオープンの予定。内装や什器などはそのまま引継ぎ、商品は書楽の取引先取次である日本出版販売(日販)に伝票切り替えを要請している。社員4人とアルバイト数十人の従業員についても、継続を希望するスタッフは受け入れる予定だ。
八重洲ブックセンター代表取締役社長・佐藤和博氏は「書楽が昨年11月に閉店を発表したところ大きな反響があり、お客様や本にかかわる方々から『戻ってほしい』と強いメッセージが寄せられた。後継書店を模索されていたようで11月末頃に当社にも話があった」と経緯を説明。
八重洲ブックセンターは東京駅八重洲口の本店(区画再開発による建物解体で23年3月末に閉店)をはじめ、現在展開する8店舗のうちルミネ荻窪店(杉並区)とイトーヨーカドー武蔵境店(武蔵野市)が長年中央線沿線で営業してきたこともあり、「中央線は本好きが多い沿線だと認識してきた。市場など定量的な面からも八重洲ブックセンターとして店舗運営が可能と判断した」という。
トーハンが実施した市場調査で、阿佐ヶ谷周辺には書楽の常連客に多かったシニア層とともに、若年のファミリー層も多いことが判明。「まずはいまの顧客であるシニア層への強みをいかしつつ、落ち着いてきたらビジネスパーソンやファミリー層といった潜在ニーズに対する付加価値も提供していきたい」と佐藤社長。
営業継続の情報がSNSなどで広がったことから、出版社関係者などから「ありがたい」「協力できることがあればいってほしい」と好意的な反応が多いという。また、入居するビルのオーナーも地元から書店がなくなることを危惧し、営業継続を歓迎しているともいう。
こうした反応に佐藤社長は「22年の調査では、東京都内でも区市町村62自治体のうち7自治体で書店ゼロ、1軒だけの自治体と合わせると2割に近い(19.3%)といわれる。書店が減ることへの危機感が業界内外で共有されるようになってきたと感じる」と述べ、「これまでのスタッフとノウハウを補い合いながら作り上げていきたい」と話している。
□書楽の所在地=〒166-0004東京都杉並区阿佐谷南3-37-13
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