


日本文学振興会は1月15日、都内で選考委員会を開催し、第172回「芥川龍之介賞」に安堂ホセさんの『DTOPIA』(河出書房新社)と鈴木結生さんの『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版)、第172回「直木三十五賞」に伊与原新さんの『藍を継ぐ海』(新潮社)をそれぞれ選出した。
芥川賞 安堂ホセ『DTOPIA』(河出書房新社)
安堂さんは第59回「文藝賞」を受賞したデビュー作『ジャクソンひとり』(第168回/2022年下半期)、第2作『迷彩色の男』(第170回/2023年下半期)に続き、3年連続での候補入りで今回、芥川賞の受賞が決まった。
『DTOPIA』は、恋愛リアリティ―ショー「デートピア」を舞台に繰り広げられるスリリングかつ、重層的なストーリーを予測不能な角度から描き切った著者の第3作。2024年10月には第46回「野間文芸新人賞」の候補作にも選ばれ、選考委員各氏から高い評価を得ていた。
書誌情報
『DTOPIA』(河出書房新社) 「DTOPIA(デートピア)」2024シリーズの舞台は南太平洋の楽園、ボラ・ボラ島。白人女性“ミスユニバース”を巡って、Mr.L.A、Mr.ロンドン、Mr.東京ほか、各国・各都市を代表する総勢10名の男が競い合う。
Date1からDate10まで、全10エピソードにわたるショーの撮影には40台ものカメラが使用され、視聴者たちは、島の隅々から、あるいは、空中、水中を回遊しながら出演者たちを捕捉し、絶えず追跡し続ける。
過去、現在、未来を縦横にトラッキングしながら、執着と忘却を繰り返す視点。切り貼り、編集されながら、増殖、膨張する楽園の時間。ジェンダー、セクシャリティ、人種、出自に対する暴力、あらゆる欺瞞と印象操作に晒されながら、彼らがたどり着いた先とは――。
すべての固定観念を問い直す、安堂ホセの圧倒的最高傑作。
書名:DTOPIA(デートピア)
著者:安堂ホセ
仕様:46判/上製/160ページ
発売⽇:2024年11⽉1⽇
定価:1760円
ISBN:9784309039282
装丁:川名潤
著者紹介

1994年、東京都生まれ。2022年、『ジャクソンひとり』で第59回文藝賞を受賞しデビュー。同作は2023年に第168回芥川賞候補、また2024年にフランス語版となる「Juste Jackson」がマルキ・ド・サド賞の候補となった。2023年、2作目となる『迷彩色の男』を発表。同作は2024年に170回芥川賞候補となり、最新作『DTOPIA』とあわせてデビュー以来3作連続の芥川賞候補となる。
芥川賞 鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版)
同じく芥川賞を受賞した鈴木さんの『ゲーテはすべてを言った』は、「小説トリッパー」2024年秋季号に掲載され、読者から絶賛の声が寄せられた。単行本は選考会当日の1月15日に発売した。
鈴木さんは「人にはどれほどの本がいるか」(「小説トリッパー」2024年春季号)で、第10回「林芙美子文学賞」佳作を受賞しデビュー。『ゲーテはすべてを言った』は同賞の受賞後、第1作にあたる。
書誌情報
『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版) 高名なゲーテ学者・博把統一(ひろばとういち)は一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出会う。ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求めて、膨大な原典を読み漁り、長年の研究生活の記憶を辿るが――。ひとつの言葉を巡る統一の旅は、創作とは何かという深遠な問いを投げかけながら、読者を思いがけない明るみへ誘う。若き才能が描くアカデミック冒険譚!
書名:ゲーテはすべてを言った
著者:鈴木結生
発売日:2025年1月15日
定価:1760円
頁数:192ページ
ISBN:9784022520395
著者紹介

2001年生まれ。福岡県在住。「人にはどれほどの本がいるか」で第10回林芙美子文学賞佳作を受賞し、デビュー。
直木賞 伊与原新『藍を継ぐ海』(新潮社)
伊与原さんの『藍を継ぐ海』は、これまでも科学が人に与える驚きと希望を描き続けてきた著者が紡ぎ出す短篇集。
書誌情報
『藍を継ぐ海』(新潮社) なんとかウミガメの卵を孵化させ、自力で育てようとする徳島の中学生の女の子。長崎の町役場への面倒なクレーム電話をきっかけに、謎めいた空き家にたどり着いた公務員。老いた父親のために隕石を拾った場所を偽る北海道の身重の女性。山口の島で、萩焼に絶妙な色味を出すという伝説の土を探す元カメラマンの男。都会から逃れ移住した奈良の山奥で、ニホンオオカミに出会うwebデザイナーの女性――。人間の生をはるかに超える時の流れを見据えた、科学だけが気づかせてくれる大切な未来。きらめく全五篇。
書名:藍を継ぐ海
著者:伊与原新
発売日:2024年9月26日
造本:ソフトカバー
定価:1760円
ISBN:9784103362142
著者紹介

1972年、大阪生れ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞。2019年、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞。他の著書に『八月の銀の雪』『オオルリ流星群』『宙(そら)わたる教室』『青ノ果テ 花巻農芸高校地学部の夏』『磁極反転の日』『ルカの方舟』『博物館のファントム』『蝶が舞ったら、謎のち晴れ 気象予報士・蝶子の推理』『ブルーネス』『コンタミ 科学汚染』などがある。
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