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『ハイジ 上巻~出会い~』『大きな古時計』(出版ワークス)/工藤和志社長ら関係者に聞く

不朽の名作「デジタル技術」と
「専門家の力」で蘇らせる

 絵本、児童書を中心に出版する出版ワークス(兵庫県神戸市・工藤和志社長)は、日本でも「アルプスの少女ハイジ」のタイトルでアニメ化されるなど人気を博したスイスの児童文学作品『ハイジ』を手芸家・高原ゆかりさんによる「絵キルト」で再現した『ハイジ上巻~出会い~』を10月31日に刊行。また、絵本作家でイラストレーターの伊藤正道氏(1956~2012年)が、アメリカで生まれた名曲を絵本化した『大きな古時計』も同日、復刊した。両作品にはQRコードが付けられ、スマートフォンやパソコンで読み取ると朗読の音声や今作のために作曲したメロディが流れるという「絵本」のジャンルでは収まらない作品に仕上がった。(聞き手 堀雅規)

工藤和志社長

 工藤社長、高原さん、両作の楽曲を提供したピアニストで、音楽を活用した乳幼児向けアカデミーの展開、子どもたちの舞台演出なども手掛ける今安志保さん、今安さんの長女で女優、ラジオパーソナリティも務める朗読の琴奈さん、志保さんの教え子でミュージカルにも出演、今回、琴奈さんと一緒に『大きな古時計』の歌唱を担当した齊藤春佳さん(5歳)に話を聞いた。

有名作品をこれまで以上に浸透させるには

工藤 伊藤正道さんの権利者(親族)から『大きな古時計』復刻の話をいただいたのですが、17 年前に他社から刊行され、多くの人に知れ渡っている作品なので、普通の焼き直しではこれまで以上に浸透するのは難しいのではと考えていました。そこで『大きな―』は「本ではなく、『音楽』」という根本を見つめ直して、ある人の紹介で知り合った今安(志)さんに相談しました。
 今安さんは、自身が演奏するだけの音楽家ではなく、音楽の力と、子どもたちの脳、心理面を紐付けする独特の幼児教育を推奨されている。近年増えているという多動性症候群(ADHD)の原因や改善策においても明確な理論を持たれ、話を聞いて感銘を受けました。今安さんから「音楽を取り入れて、子どもの脳の活性化、親子のコミュニケーションなどに繋がる作品にしてはどうか」と提案され、ぜひ創作活動に参加してほしいとお願いしました。

今安志保さん

「ミラーニューロンの神経細胞」の活性化を絵本に活用

今安(志) 絵本は強制的に読ませるのではなく、「読みたくなる」ものであるべきです。工藤社長から話しを聞いたとき、オリジナルの曲を作り、歌も入れて、「読ませる絵本」ではなく、音を聴くと「自然と一緒に歌いたくなる」、「本を読みたくなる」ものにした方がいいと申し上げました。
 私が幼児教育で常に意識していることは「ミラーニューロンの神経細胞」(自らの行動と、他者の行動を見て、反応、刺激、影響を受ける神経細胞)の活性化です。音楽や人前で演じることを通じて子どもの非認知能力を高めます。本は図書館で静かに読むだけのものではありません。「大きな声で読んでいいんだ」、「歌っていいんだ」と思える作品に仕上げたいと思い、歌唱の二人を推薦しました。

今安琴奈さん

今安(琴) 架空の人物を演じるときは、ある程度、自分で考えて表現できますが、実在した人は、不朽の名作「デジタル技術」と「専門家の力」で蘇らせる有名作品をこれまで以上に浸透させるには「ミラーニューロンの神経細胞」の活性化を絵本に活用『ハイジ 上巻~出会い~』『大きな古時計』(出版ワークス)/工藤和志社長ら関係者に聞く「自分」という色を出さずに、本人の「人生」だけをお客様に届くように心がけてきました。今回、『大きな―』巻末の伊藤正道さんが「『大きな古時計』に託した思い」を朗読したときは、心の中で伊藤さんに「私の声、私の身体を使って読んでください」という思いで、「朗読」というより伊藤さんの「代読」という気持ちで読ませていただきました。
 歌唱においては、100 年以上前に作曲された歴史ある名曲ということで、とても身が引き締まる思いで歌いました。
 何より収録は約5時間かかりましたが、春佳ちゃんは集中力が途切れず、頑張って歌いました。その健気で懸命に歌う様子は、聴いてくれた人に必ず伝わると思います。

齊藤 少しドキドキしたけど、とても楽しくワクワクしながら歌いました。またやってみたいです。

工藤 伊藤さんの「託した思い」は、文章のみで朗読の予定はなかったのですが、琴奈さんが提案して読んでくれました。同席した当社のスタッフは涙を流しながら聞いていたそうです。ぜひ多くの読者にも聞いてほしいですね。

齊藤春佳さん

全ページ絵キルトで制作した希少作品

工藤 『ハイジ 上巻~出会い~』は、元美術教師で、現在は兵庫県で絵本図書館を開き、手芸家、キルト作家として知られる高原ゆかり先生に依頼しました。手芸書を刊行しておられる著名な方ですが、私の妻がパッチワークをしていることもあり、憧れの存在である高原先生に「絵キルト」の手法を用いて、さらに作品の選定も先生にお任せしました。

高原 「赤毛のアン」、「鏡の国のアリス」など、名作は数多く、選定はとても悩みました。自分の原点を振り返って子どものころ大好きだった「ハイジ」を提案しました。干し草の上で寝転んで、おじいさんの家の丸窓から月明かりが差し込んで…そんな情景を思い起こしながら、とても楽しく作業しました。
 読者のみなさんには、従来のインク、絵の具とは異なる、布、糸、ビーズなどの「味わい」を感じとってほしいです。16、17 ページのモミの木は工藤夫人が携わってくれました。素晴らしい出来映えです。

高原ゆかりさん

今安(志) 高原先生の絵キルトがすごく素敵なので、作品の素晴らしさを損なわず、先生の世界観をピアノでどう表現するか、私の音楽人生の中でも大きな挑戦でした。私も山が大好き。そんなことを思いながら、『ハイジ』のためだけに作曲しました。収録も一音一音を大事に演奏し、気持ちが入ったメロディになったと自負しています。ぜひ多くの子どもたちの手に届いてほしいと願っています。

今安(琴) ハイジの作品はもちろん知っていますが、改めて高原先生作の『ハイジ』を読んで感動したと同時に「風」、「香り」のようなものを感じました。どのように朗読すれば、先生が気持ちを込めて製作したハイジやおじいさん、そしてクララたちが、読者の方々に、いかに動いて見えるかを考えました。母の書き下ろし曲に私が声を乗せて、命を吹き込む気持ちで取り組みました。「本」というより、「生きた作品」になったと思います。

最新技術駆使も根幹は「紙芝居」

工藤 伊藤さんのイラスト、高原先生のキルト、このクオリティが高い作品に、クオリティの高い「音」を掛け合わせるとどうなるのか、何が起きるのか、当社としても初めての取り組みでしたが、想像以上のものができました。完成品を見て、聴いてみると、QR コードという先端の技術を使っていますが、懐かしい感じがするのです。それは「紙芝居」という記憶だったのです。古時計、ハイジのストーリーが鮮明によみがえって、子どものころ大好きだった紙芝居を思い出しました。
 活字離れ、本離れが叫ばれ、確かに「読む」という動作は、読書に慣れていない人には非常に時間がかかる感覚です。しかし、「見る」、「聴く」はダイレクトに脳に、心に入ってきます。今作を手にして想像力がかき立てられ、「本って面白いな」と思う子どもたちが増えてくれれば児童書出版社として喜ばしいかぎりです。

株式会社 出版ワークス
設 立:2011年5月18日
資本金:1490万円
代表者:工藤和志
所在地:〒651-0084 
兵庫県神戸市中央区 磯辺通3丁目 1-2-604

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