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『図書館のお夜食』(ポプラ社) 著者・原田ひ香さんに聞く 書店、図書館への想い

原田ひ香さん(ポプラ社提供)

 ポプラ社は6月、人気作家・原田ひ香さんの最新刊『図書館のお夜食』を刊行した。『三千円の使いかた』(中央公論新社)や『ランチ酒』(祥伝社)など、数々のヒット作を生み出している原田さん。夜だけ開いている不思議な図書館を舞台にした今作も、このほど4刷が決定するなど売れ行きも好調だ。図書館や書店、そしてそこで働く人たちへの思いなどについて原田さんに聞いた。【増田朋】

 東北の書店に勤めるもののうまく行かず、書店の仕事を辞めようかと思っていた主人公は、SNSで知った東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは、開館時間が夕方7時から12時まで、亡くなった作家の蔵書が集められた、いわば本の博物館のような図書館だった。しかも、仕事中に出てくるまかないは実際の本に登場する〝料理〟のみ…。

 原田さんがこの物語を執筆するきっかけのひとつが、今の出版不況によって生活が成り立たなくなり、熱意のある書店員さんが仕事を辞めざるを得ない現状があるという。「夜の図書館」で働いている本好きのメンバーたちの心模様などを通して、自信をなくしたり、目標を見失ってしまうことがあるかもしれない人たちの背中を、やさしく押してくれるような作品となっている。

最新作の舞台は「夜の図書館」

──図書館を舞台に、本にまつわる人たちの物語を書こうと思ったきっかけは何だったのですか。

 夜だけ開いている図書館を題材にしたいという構想は数年前からあったんです。夜の図書館って、老若男女がいつでも訪れることができて、好きな本を選んだり、調べものをしたりする昼間の図書館とは違って、知る人ぞ知る秘密の場所のようなイメージです。

 それとともに、村上春樹さんが昔に書いたエッセーの中だったか、海外には図書館を見回る「探偵」のような人がいるというお話も気になっていました。あやしい本ばかりを借りていくような人がいたり、置いてある本を盗んで売っちゃうような人を取り締まる探偵です。そういった話が合わさって、夜だけ開いてる図書館での物語を書いてみたくなったんです。

 また、今回は亡くなった作家の蔵書を集めた図書館での話ですが、これも以前から考えていました。小説家だけでなく作家の皆さんは、とても興味深い、多くの蔵書をお持ちでしょう。そういった蔵書が作家ごとに展示されているような図書館があったら、おもしろいなというのが執筆のきっかけですね。

──物語には本好きなキャラクターがたくさん出てきますね。

 夜の図書館で働くメンバーはそれぞれ、生き方や働き方に悩みや秘密を抱えています。そんな彼らに共感し、読んだ人が「働くこと」「生きること」をあらためて考える機会になればいいと思います。

 例えば、かつて没頭していた読書に徒労感を感じるようになり焦りを感じている蔵書整理係の女性が登場します。最近は、わたしも含めて、長い時間集中して本を読むことができなくなったと感じる人も多いのではないでしょうか。読んでいてもメールやニュースなどが気になったり、電子書籍で読んでいてもLINEが画面に通知されたりして、たびたび気が散ってしまいます。

 テレビも長い番組を見るのもけっこう辛くなっていますし、ユーチューブやSNSなど本当に「ショート」なものが好まれる時代だと思います。このままだと、みんな本当に本が読めなくなってしまうのではないか。そういった恐れ、危機感もあのキャラクターには込めています。

子どもの頃から通う書店、図書館

──原田さんにとって書店や図書館とはどんな場所ですか。

 新刊本を置く書店や古書店、図書館など本にまつわる場所には、子どもの頃からよく出入りしてきました。近所の図書館も書店も、本当に毎日のように行く場所でした。学生時代や働き始めてからも、ターミナル駅近くの書店には取りあえず行っていましたね。有名作家の新刊が出るとなれば、今でこそネットなどでたくさんの情報が入って来ますが、昔は書店に行かないと分からないことも多かったです。ですから、週に何回かは必ずチェックするっていう感じでした。

 ドラマのシナリオを書く仕事をしていたときも、おもしろい原作本に出会うため、これまた本当に毎日のように書店に通っていました。大きな書店で新刊の棚からざっと見ていきながら、びびっと来る本を探していました。

 ただ、自分が小説を書くようになり、デビューから何年かは書店から少し足が遠のきました。例えば、3冊目に書いた『人生オークション』という本は初版部数も少なく、書店に並んでいるのを一回も見ずに終わったんです。そんな作品も文庫になってから何度も重版し、本当にありがたいと思っていますが、自分の書いた本がどこにも置いていないことが、なかなか辛いときもありましたね。

 今は近所の小さな書店にもよく行きますし、『三千円の使いかた』が文庫ランキングに入っていて、うれしくなってお店の人に思わず声をかけてしまったこともありました(笑)。今は本をネットで買う人も増えているようですが、私の作品は書店で買ってくださる人が多いと聞いています。そういう意味でも書店の方々にはとても感謝しています。

──書店や図書館には新たな出会いを求めて行く感じですか。

 そうですね。今は自分が好きな作家さんとツイッターなどでつながっていれば、欲しい本の情報をすぐに知ることができて、買うことができます。ですから今はむしろ、書店で誰かの新刊に出会うことを楽しみにしています。昔はよく本の「帯」だったり、その本の「表情」を見て買うことも多かった気がします。そういった感覚も忘れないようにしたいですね。

──出版不況で書店員たちが仕事を続けられなったり、図書館職員の非正規雇用が問題になっていたりしています。

 閉店してしまう書店の話題などを耳にするたびに、皆さんものすごく苦労されていて、本当に大変だなと感じています。公立図書館で非正規雇用の職員が増えているという話も聞きます。

 作家として何ができるのかは分かりませんが、この本を読んだ書店員さんからは「自分を見失いそうになったとき、読み返してそばに置いておきたい一冊」とか、「この一冊の本がさらに本好きの道に導いてくれる」といった感想を寄せていただき、感謝しています。ですから、今回書いたような「夜の図書館」のような場所、生き方や働き方に悩む本好きの皆さんが集まれるようなところがあったらいいなと、思ったりもします。

 また、この本を読んでくださる読者にも、書店員さんや図書館員さんの厳しい状況に目を向けてもらえるきっかけにもなればいいと願っています。書店の皆さんにはいつもイベントを考えて開催していただいたり、作家にもとても大事な存在です。時々、知り合いの書店員さんにお会いしたりしてサイン本を頼まれたりもしますが、できるだけ協力するようにしています。私も作家としてようやく皆さんに〝恩返し〟ができるようになってきましたので、できることがあれば、これからも積極的にやっていきたいです。

──この本を売っている書店員さんたちへのメッセージはありますか。

 メッセージではないかもしれませんが、ぜひ私のツイッターをフォローしていただきたいです。書店員さんでしたら私もフォローしますので、そうやって、もっとたくさんの方たちとつながりたいですね。

 また、この本には男性だったり年配のキャラクターも登場しますので、実際にそういう方たちにも自分の人生と照らし合わせながら読んでいただけれたら、うれしいです。読後の感想で、本に携わっていない方からも「こういう場所で働きたくなった」というような声もいただきますので、本好きな人はもちろん、そうでない人にもぜひ手にとっていただけたらうれしいです。

──ありがとうございました。

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