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日刊現代 養老孟司氏×名越康文氏の対談本『ニホンという病』刊行

養老孟司氏(右)と名越康文氏

 日刊現代は医学者、解剖学者の養老孟司氏と、精神科医の名越康文氏による対談をまとめた書籍『ニホンという病』を5月末に刊行したが、発売即重版となるなど話題を集めている。養老氏と名越氏はこのほど、文化通信社の取材に応じ、この本に込めた思いから書店や活字離れなど出版業界をめぐることまで、多岐にわたって語った。【増田朋】

「読んでも治らないが 大量のヒントがある」

 同書は、夕刊紙「日刊ゲンダイ」での連載をベースに、2022年1月から23年1月までの全5回におよぶ養老氏、名越氏の対談内容を編んだ。対談内容の一部は日刊ゲンダイ紙面(デジタル紙面含む)で22年2月から月に1回のスタイルで、12回にわたって連載した。

 明治維新、敗戦、そして南海トラフ地震という三度目の大きな転換期が来ることに備えるため、日本社会が患う「ニホンという病」を2人が診察している。好き勝手にアドバイスを処方しており、「読んでも治りませんが、大量のヒントはあります」とおすすめしている。

 全5回におよんだ2人の対談のうち、新聞に載ったのはほんの一部。養老氏、名越氏ともに「紙面では載せきれなかった話もあったが、この本に対談の全容が書かれているので、ぜひ読んでほしい」と語る。

 対談ではコロナ禍、ウクライナ侵攻、メタバース、南海トラフ地震、組織社会での生き方、生と死など、さまざまなテーマについて2人の「ドクター」が分析・解説している。

 「ただ、何かに悩んでいるような人がこの本を読んでも、悩みが治るわけではありませんよ」と養老氏は笑う。読んだ人がそれぞれ、何かのヒント、答えを見つけてくれることを期待している。

 名越氏も「養老先生と私の共通点は『説教をしたくない』ところ」と明かす。「この本でもそうだが、(2人とも)読者を教え導く気はない。もし、そういったことを狙っても、上手くいくものではないから」といい、「この対談を小耳にはさんだ(読んだ)人が、何かに偶然気がついてくれて、生きる糧になれば」と考えている。

養老氏「書店は散歩の目的となる大事な場所」

 新聞業界、出版業界ともに「活字離れ」が言われて久しいが、名越氏は「活字離れというのは違っていて、本には読んでいて疲れる本と、疲れない本があるのではないか。疲れない本はどんどん興味がわいて、すいすいと読んでいける。その違いを研究してみては」と持論を展開。養老氏も「みんなスマホばかり見ているんだから、活字離れではないだろう」と話す。

 紙とデジタルの話題についても、養老氏は「紙の新聞や本を読む方が(デジタルよりも)身体性が高い。五感を使って読むので、脳が活性化する」とみる。自身も「真面目に考えて本を読むときは、紙でないとだめだな。年のせいかもしれないが、例えば虫の論文などもデジタルの画面だとだめで(記憶が)定着しない」という。

 また、街の本屋についても、「私にとって書店は散歩の目的となる場所。本屋に寄って、好きな本を買って、コーヒーを飲んで、読みながら帰る。子どもの頃からよく行くし、大事な場所」といい、そこが無くなっていく現状を嘆く。

 名越氏も「書店は何も買わなくても寄り道できる場所。子どものころ、何もなくても寄ってみて、いろいろな本を眺めているだけでも、おもしろかった。子どもたちの好奇心を満たすような、寄り道できる場所が無くなっているのは残念」との思いを語った。

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