出版文化産業振興財団(JPIC)と㈱カーリル、版元ドットコムは6月21日、開発中の「書店在庫情報」システムを一般公開し、実証実験をスタートしたことを発表した。実証実験は3社を中心に準備が進められ、協力会社として光和コンピューター、トーハン、日本出版販売が連携している。まず、第一フェーズとして一部の書店から先行して在庫検索を開始し、実証実験の進展を見据え、協力会社および参画書店の拡充も視野に入れていく。
発表によると、「これまで一般読者にとって、欲しい本があっても近隣の書店在庫が分からないことが多く、購入のハードルとなっていたことは否めない」としたうえで、「もしも街の書店の在庫情報がオープン化され、スマートフォンを使って現在地周辺の書店在庫を、横断的に検索できるようになれば、すぐに読みたい読者にとっては便利で、書店にとっても新たな顧客を招くきっかけになるのではないか」との考えから、今回のプロジェクトをスタートした。
プロジェクトの「書店在庫情報」システムの理念は、データ開示に同意した書店の在庫情報を、ネット上のあらゆる書籍情報サイトや出版社サイトに、オープンソースとして実装できるようにするもの。
また、図書館OPAC(検索システム)と連携できれば、借りたい本に多くの待機者がいる場合など、OPACの画面からこのシステムにアクセスすることで、近隣書店で購入できることを読者に伝えられる。「本と読者との接点を最大化していくために、図書館と地域書店が連携する一つの具体策として、実証実験の中で実現可能性を検証していく」という。
開発にあたって、書店が在庫を登録する方法もいくつか準備している。すでに在庫をウェブ上で公開している書店からは、システム的に自動取得することで、書店側の新たな開発や手間を省く。一方、書店の方針次第で、API連携が望ましい場合は個別に対応する。さらに、今後より多くの書店が参加できるように、単品在庫管理をしていない書店でも、任意の在庫を選んで登録できる手段も用意し、実証実験の中で検証していく。
基本方針として、書籍の新刊販売をおこなっているすべての書店を在庫検索対象としていく考えだが、6月21日のスタート時の在庫情報提供書店は、ブックファースト、大垣書店、くまざわ書店、今井書店のグループと一部の地域書店。このほかの書店チェーンとも、在庫情報利用に向けた協議を進めており、在庫開示書店は随時増加の予定としている。在庫データを持たない書店も、在庫情報の登録手段を準備しており、随時参加を募っていく。
また、在庫横断検索可能な連携サイトは、カーリル、版元ドットコム、青弓社、スタイルノート、ポット出版の出版社サイト。これらのサイトの書誌カタログを開くと、読者の検索する位置から近い順に、書店在庫が見られるよう準備している。今後、拡大をめざして、各種サイトと協議を進める。
なお、実証実験や本稼働に向けて、参加書店や掲載サイトを募集している。また、自社で在庫情報をエントリー出来る書店には、マニュアルも提供する。問い合わせ先はinfo@openbs.jpまで。
実証実験URL
・カーリル=https://calil.jp/
・版元ドットコム=https://www.hanmoto.com/
・ポット出版=https://www.pot.co.jp/
・青弓社=https://www.seikyusha.co.jp/
・スタイルノート=https://www.stylenote.co.jp/
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