辞書の出版で知られる株式会社三省堂は、光和コンピューターの出版ERPシステムを導入することで、本の企画から販売、印税支払いまで一貫した管理が可能になるとともに、課題だったリアルタイムな在庫管理を実現させるなど業務の効率化やサービス向上に役立てている。
同社は1881年に書店(三省堂書店)として創業し、1915年には出版と印刷部門が三省堂として独立した。小学校、中学校、高等学校向けの辞書と検定教科書を中心に、年間の刊行点数は170点。
辞書の市場については、近年、高校向けでデジタルの影響があるという。コロナ禍で政府のGIGAスクール構想が加速していることで、紙の辞書の購入が、アプリの辞書の購入に変わるケースもでてきているとのこと。
また、同社も辞書アプリなどデジタル商材を提供しているが、「紙、電子に関わらず、そもそも辞書がどのように使われているのかどうか、調査が必要な時代になっています」と同社執行役員営業局販売企画部部長の林治信氏は話す。
一方で、小学生、中学生向けは辞書引き学習の影響などもあり、紙の辞書市場は厳しい中でも堅調。この分野をどのように拡大するのかも課題だという。
削除語が注目集めた『三省堂国語辞典』
そんな中、同社が2021年12月に発売した『三省堂国語辞典』第八版の売れ行きは予想以上に好調だ。“時代を写す辞書”という理念で積極的に新語を取り上げてきたが、第8版では3500の新語が採用された一方で、「MD」「コギャル」「着メロ」など1100語が削除された。
この「削除語」がメディアの注目を集め、クイズ番組などでも取り上げられたことで市場が広がった。「学校に見本を届けていないのに、一般の人が買ってくれて新学期シーズンにもかなり売れました。辞書も関心を持ってもらえれば売れることを改めて実感しました」と林執行役員。学校市場だけではない販売促進のあり方を考えていくという。
今年は『三省堂国語辞典』と『新明解国語辞典』の元となった『明解国語辞典』の誕生から80周年を迎えることから、2月1日から5月31日の期間で、いずれかの辞書を購入した人が応募すると、抽選で記念のオリジナル図書カードと一筆箋やコンパクトミラーを贈る記念キャンペーンも実施する。
さらに、辞書や教科書以外の学習参考書や、『模範六法』などで培ったノウハウを生かした司法書士、行政書士など資格試験書も一定のシェアを獲得しており、新たな柱として力を入れている。
一貫管理と在庫リアルタイム管理を実現
光和コンピューターの出版ERPシステムは10年ほど前に、販売管理、出版VAN、印税支払、製作原価管理を導入した。それまでは販売や印税支払いなどを別のシステムで管理していたため、統合したいということが目的の一つだった。
また、学校採用期には在庫量が大きく変化するが、当時は在庫を平置き倉庫分と立体倉庫分を別システムで管理をしていたため、リアル在庫を確認するには子会社として物流を担っている株式会社三省堂流通センター(東京都八王子市)に電話で確認するしかなく、この点を解消することも課題だった。
これらの目的を実現できるシステムとして、光和コンピューターを選定。企画内容や原価が入力されるところから、販売・在庫管理、印税支払いまでが一つのシステムで完結できる体制になった。また、在庫のリアルタイム管理が可能になったことで、各担当者が端末で在庫数を確認することも実現できた。
株式会社三省堂
代表者:瀧本多加志
社員数:100名
資本金:7000万円
所在地:〒102-8371 東京都千代田区麴町5-7-2
電 話:03-3230-9411
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