京都を舞台にした小説(過去1年以内発刊)の中から、「最も地元の人に読んでほしい作品」を選ぶ「第11回京都本大賞」は、石田祥『猫を処方いたします。』(PHP研究所)に決定した。
京都の書店、販売会社、出版社らで組織した実行委員会が、2022年4月~23年3月に発刊された42作品から、高野知宙『ちとせ』(祥伝社)、木爾チレン『そして花子は過去になる』(宝島社)、『猫を処方いたします。』の3作をノミネート。京都府書店商業組合ウェブサイト、または書店店頭での一般投票(ネット1票1ポイント、店頭5ポイント)を経て大賞が決まった。
『猫を処方いたします。』は、京都市中京区の薄暗い路地にある「中京こころのびょういん」で、心の不調を抱える患者に処方するのは、薬ではなく本物の猫。愛くるしい猫と暮らすことで少しずつ心も変化していく、猫と人が紡ぐハートフルなストーリー。
10月30日、京都市で開かれた授賞式で石田さんは「京都の熱烈なファンは多く、猫を大好きな人もたくさんいる。その2つが重なったことで支援がいただけたと思う。これからも読んだ人が京都に行ってみたいと思うような小説を書いていきたい」と受賞を喜んだ。
今後の創作活動については「ネコはなかなか外に出ないキャラクターだけど、11月に2作目が出て、今後シリーズ化していきたい。この受賞を機に、京都のどこかで猫が活躍できる場を設けたい」と語っていた。
京都ガイド本大賞『私だけのとっておきの京都』
リピーター賞『謎解きガイドブック京都』
この日は10月に発表された「京都ガイド本大賞2023」の大賞『私だけのとっておきの京都~憧れシーン♯55~』(JTBパブリッシング)、リピーター賞『謎解きガイドブック京都―陰陽師が隠した宝物―』(朝日新聞出版)の授賞式も同時に行われた。
京都本大賞実行委員会・洞本昌哉実行委員長(ふたば書房)は、『猫を―』について「まさに地域のみなさんに一番読んでほしい、楽しんでほしい作品が選ばれた」とし、「12月に石田先生のサイン会を実施したい。ぜひ協力してほしい」と申し入れた。
『私だけの―』については「細かく取材している。丁寧に作り上げ、わかりやすくて親切なガイド本」、『謎解き―』については「着眼点がこれまでのガイド本と異なり、クイズ形式で面白い。一般観光客もだが、地元や京都通の旅行者にも通用する作品」とそれぞれ選評した。
最後に森武紀明実行委員(山城書店)が「過去には映像化された京都本大賞受賞作もある。『猫を処方いたします。』もそうなれば、地域が盛り上がり、本屋としてもとても喜ばしい」と映像化に期待を示した。
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