KADOKAWAが運営する「ダ・ヴィンチWeb」は“本とコミックのポータルサイト”として多様なジャンルの本をレビューやインタビューで紹介、本から派生したエンタメ情報も掲載しており、高いクオリティーへの評価も高い。月間PVは6820万(2022年3~5月期平均)、コロナ禍の在宅需要が追い風となった2021年3月には1億1000万PVを記録した。
金沢・新編集長のもと、本と人の魅力を伝える
「これだけのPVを獲得する理由は、読者と作品に徹底的に寄り添った記事作りにある」と金沢俊吾編集長は語る。今年10月に編集長に就任した金沢氏は、文学部の学生だった頃から音楽誌でライターを務め、広告会社に就職後もライター業を兼務。編集者としてKADOKAWAグループに転職し、現在に至る。編集長に就任してからは自身が取材・原稿執筆を行う機会は減ったが、それでもYOASOBI、ピースの綾部祐二、白泉社社長・菅原弘文氏などにインタビュー、好きな作品・作家への愛を込めた記事にこだわっている。
「新刊レビューも著者インタビューも、作品・作家に対する理解や愛情の深いライターがていねいに書いています。そしてインタビューでは、いわゆるテンプレートな質問はしません。単なる作品PRではなく、新刊を通してその人の魅力や読者が知りたい内容を伝えています。だからこそ、発売時期に同種の記事がたくさん出るなかで、ダ・ヴィンチWebが広く読まれて反響もひときわ大きい。また、オリジナル企画として著名人が愛読書を紹介する連載『私の愛読書』を行っているので、そちらにも出演していただければ露出増、かつ面白い記事にもなり、版元さんとしてもダ・ヴィンチWeb としても得るものが大きい」という。
独自コンテンツで掲載価値を高める
またサイトの傾向として、特に小説やマンガのレビュー(書評)記事は読者の滞在時間が長く、長い記事も最後までしっかり読んだうえで電子書店のアフィリエイトリンクをクリックしている。好きな作家さんの情報にリンクする熱量の高さが伺えるからこそ、小説やマンガのほか、実用書の書評の相談も多いそうだ。その信頼関係を大切に、レビューやインタビュー、書評、試し読みなども集約した特集ページを制作。独自コンテンツの拡充により、サイト自体の魅力、および“ダ・ヴィンチWebに掲載されることの価値”を高めたい、とした。
グループ関連サービスとの連携に強み
連携したコンテンツの存在も大きい。2023年に第9回を迎えた「次にくるマンガ大賞」(ブックウォーカーの共催)は、ユーザー投票で決定されるランキングが特長。Web発のマンガに焦点を当てた「Webマンガ部門」もほかのマンガ賞に先がけ第1回から展開している。第9回では海外(英語圏、台湾など)からの投票も含め、約44万票を集めた。それだけに、1位を獲得した作品が発表されるとSNSで一挙に拡散、コミックスの売上増と共にアニメ化・映像化などのメディア展開も拡大している。電子書店を中心に多くの企業が協賛(第9回:22社)するようになったことは、自然な流れだろう。
「献本プレゼント」で書店店頭にも誘引
もうひとつは、グループ会社のブックウォーカーが運営する読書管理記録サイト「読書メーター」。日本最大級の書評サイトで、小説好きな読者が集うことで知られている。
加えて、書籍販促のマーケティングを担当するダ・ヴィンチWeb編集部の今川和広氏は読書メーターの献本プレゼント広告の特長を語る。「サイト上で新刊発売の告知として、ユーザーに抽選で新刊のプレゼントを行っています。そこで作品への注目が高まり、サイト内の『読みたい本』への登録も集まる。さらに『読みたい本ランキング1位』になると、それを本の帯などに使っていただくこともできる。即効性と拡張性に優れた広告企画のため、文芸作品のプロモーションに非常に多くご利用いただいています。読書メーターに集まる小説好きユーザーと、そんな方々に本を届けたい版元さん両方のニーズに寄り添ったダ・ヴィンチならではの発想で作られた広告企画だと考えています」としている。
さらには、出版関係以外の企業とのタイアップも行っている。例えばニコニコ生放送で配信された第9回「次にくるマンガ大賞」受賞作品発表会では興和の「キューピーコーワiドリンク」を紹介して試飲を行い、話題となった。ダ・ヴィンチWebでも小説家やマンガ家を起用して飲料や観光、電子機器などの広告やキャンペーン、イベント等を展開。今後もその流れは加速しそうだ。今川氏は「出版社さん、著者さん、読者の方々を繋げるハブとしてダ・ヴィンチWebができることは何か、常に考えています。本にまつわることでしたら、何でもお気軽にご相談いただけたら」、金沢編集長も「どうやったら良い作品をより読んでもらうことができるか、一緒に熱を持って取り組めれば絶対いいものが生まれますし、結果にもつながります」と語った。
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