大村紙業は400社を超える出版社から物流業務を受託する出版倉庫業最大手の1社だ。出版物の保管・出庫業務に加え、コールセンター業務やAmazoneとのEDI連携、書籍の小ロット製造を行うプリント・オンデマンド(POD)技術を活用したBOD(ブック・オンデマンド)事業を行うなど、出版流通の環境変化に対応できる多様なサービスを提供している。
同社は1960年に東京都葛飾区で創業。1979年に出版物流代行の商品管理業務を開始し、2003年には埼玉県春日部市に土地建物を取得し敷地面積1万4800坪、延床面積1万2500坪、在庫冊数3000万冊の庄和流通センターを開設した。
同センターを中心に6拠点で総在庫冊数6800万冊(良本4100万冊、返本2700万冊)、在庫点数16万点を管理。月間業量は新本入荷数500万冊、返本入荷数200万冊、直送出荷(宅配便等)100万冊、取次出庫数(アマゾン出荷含む)300万冊、改装冊数90万冊、断裁処理は年間2万トンの規模を誇る。
カラーの利用が増加品質向上と単価減で
BOD事業は2015年に庄和流通センターに印刷機を導入して事業を開始。取次による配本抑制といった流通の変化に伴い、小ロット製造へのニーズは高まっており、「当初は1カ月の半分は印刷機が止まっているといったこともありましたが、いまはフル稼働です」とBOD事業を担当する庄和流通センター・安藤直樹センター長は述べる。
2022年にはオンデマンド印刷機を更新し、フジフィルム製のモノクロ機「Revoria Press E1136P」とカラー機「Versant 3100i Press」を導入。印刷品質が向上したことに加え、以前は表紙やカバーでの利用が中心だったカラー印刷の製造単価が下がったことで本文印刷も含めてカラーの需要が拡大しているという。
「印刷品質に納得する出版社が多くなり、新刊からBODで作成するケースもあります」(安藤センター長)と利用の幅が拡大している。
また同年6月には、「BOD」を利用したことのない取引出版社にデータの受け渡し方法や品質を確認してもらうため、サンプルを50冊まで無料で制作するキャンペーンを展開。51社から問い合わせがあり、このうち32社がサンプルを作成、24社がキャンペーン終了後も利用を継続。それまで取引出版社400社のうち30社程度だったBOD利用が50社を超えるようになった。
また、BODでPP加工も可能なため、カバーなど付き物だけを製造する出版社もあるという。付き物がないことで断裁せざるを得なかった在庫を活用することができるという倉庫会社ならではの活用方法だ。
5カ年計画で物流拠点統合へ
2024年度からの中期5カ年計画では、庄和流通センターの第4期計画として、現在駐車場として利用している敷地に新倉庫を建設。複数の拠点を同センターに統合する最終段階を迎える。同時に新システム開発なども進めて付加価値の向上と経営体質の強化を図っていく。
この中期計画を推進するために、役員、執行役員を中心としたメンバーによる新組織を発足。今年3月には取引出版社へのヒアリングも実施して、業務クオリティーの向上や新たな付加価値の創造に向けた検討を進めている。
「出版社のご要望をうかがって、より付加価値を高めたサービスを提供していきたいと考えています」と飯嶋明取締役は話している。
大村紙業株式会社
所在地:〒344-0113 埼玉県春日部市新宿新田14
電 話:048-718-0011(代)
U R L:https://www.ohmurashigyo.com
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