勉強嫌いな子どもでも、ゲラゲラ笑いながら読み進められ、自然と「科学」も「読書」も好きになる──。マガジンハウス発行の学習まんが「つかめ!理科ダマン」シリーズが、好調な売れ行きを続けている。4月11日には最新刊の『つかめ!理科ダマン 6 みんなが実験に夢中!編』(B5変型判、1300円・税込)が発売され、1巻から6巻合わせて計66万部に達している。1巻の発売から約3年、同社のSNS広告から火がつき、書店での地道なプロモーションもあって、今ではテレビ番組で「小学生に最も売れている学習まんが」と紹介されるほどに。「自分の子どもにも読ませたい」と、書店店頭で手に取る親も増えているようだ。
【増田朋】
勉強嫌いも 読めば理科好きに
「つかめ!理科ダマン」シリーズは韓国発の学習まんが。シン・テフンさん(作)とナ・スンフンさん(まんが)による同作は、2009年からウェブコミックで連載をスタート。累計29億PVの爆発的人気を獲得した。アニメ、ドラマ化もされている。韓国で今も続刊中。
科学の天才シンという登場人物を中心に、その家族や友達とくり広げるハチャメチャなストーリーを通じて、子どもたちが「なんでだろう?」と思うような(1巻あたり)約20個の疑問を、科学の原理にそってわかりやすく解決する。1つの疑問を「1話1テーマ」で取り上げ、オールカラーでルビ付き。各話の最後に「知識のまとめコラム」を収録するなど、学習まんがを追求した構成も支持されている。
韓国で大人気だったこのコンテンツの版権を買い、21年8月に1巻を、同年11月に2巻を刊行した。「(まんがの)色使いや絵柄など日本人にも必ず受け入れられると、編集者とともに自信を持っていたものの、当初は伸び悩んだ」とマーケティング局営業部係長補の藤田智康氏は振り返る。それでも、有隣堂「ららぽーと豊洲店」や「たまプラーザテラス店」、ブックファースト「阪急西宮店」などに協力してもらい、実験的な展開をしながら少しずつ成果を出していった。
そういったタイミングのなか、小学5年生の親から「3巻はいつ出るのか」という1通の問い合わせがあった。それをヒントにネットで調べてみると、潜在的な読者がけっこういることに気がついた。そこで相談したのが、SNSでのプロモーションを研究し、実績を上げていたマーケティング局営業部係長の永田滋友氏だった。
永田氏の知見を生かして22年12月、SNSでの配信を始めたところ、「(前月比で)3倍、4倍と、それまでと比べものにならないくらい部数が増えていった」(藤田氏)。永田氏も「SNS広告を内製化して運用しているのが当社の強みでもある。理科を楽しみながら学べるという本書の特徴を、小学生の子どもを持つ親らに上手くPRできた」と成功の秘訣を明かす。
その後、23年4月に3巻を発売した。そのころには1巻も6刷、2巻も3刷となるなど、既刊本もどんどん売れ始めた。続く4巻は夏休みに入った直後の同年7月に、5巻は冬休み前の同年12月に発売。今年に入って、TBSのテレビ番組「中居正広の金曜日のスマイルたちへ(金スマ)」と「THE TIME,」で取り上げられたことも、部数の伸長に拍車をかけた。現在、日韓累計で200万部を超え、日本版だけでも66万部に達している。年内に続刊も2冊予定しており、年内の「ミリオン達成」も視野に入れる。
「書店に足を運ぶきっかけになる」
永田氏は「この本を本棚に入れておいたり、リビングに置いておくだけで、子どもが勝手に読み始め、本当にゲラゲラと声を出して笑っていたりするという。しかも、ただ面白いだけでなく、本で学んだことをうれしそうに親に教えるなど、確実に勉強にもなっている」と、同書ならではの魅力を語る。
そのうえで、「これまでは『知る人ぞ知る』学習まんがだったかもしれないが、首都圏などの主要書店では大きく扱っていただいており、動きも良いと聞く。ぜひその流れを全国各地の書店にまで広げていきたい。SNS広告や口コミ、テレビなどを見て、書店にわざわざ買いに行ってくれるという消費行動があることも分かっている。(消費者が)書店店頭に足を運ぶきっかけになれる本だ」と呼びかける。
藤田氏も「勉強嫌いの子どもが理科を好きになれるし、子どもたちの科学技術に対する興味を広げ、理科の学力を上げるための一助になれる本だ。他社さんから出ている学参や児童書、学習まんがとも一緒に、理科や科学にもっと関心を持ってもらえるような売場展開も面白いのでは」と薦める。
今後、スチーム教育(理数教育に創造性教育を加えた教育理念)を念頭に、「本の中に書いてある実験をみんなでするイベントなども開催できれば」(永田氏)と考えている。
藤田氏も、同社の創業者でもある岩堀喜之助氏が掲げた「読者を大切に」「創造を大切に」「人間を大切に」──という言葉を挙げ、「なかでも『読者を大切に』という言葉を胸に出版活動をしていきたい」との思いを強めている。「小学生やその親御さん、読者とのコミュニケーションの中からヒットの目を見つけたり、(児童書という)新たな市場を創造することにも挑戦したい」と考えている。
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