新潮文芸振興会は6月25日、「日本ファンタジーノベル大賞2024」(後援・読売新聞社)の贈呈式および祝賀パーティーを東京・千代田区の読売新聞東京本社レセプションルームで開催した。大賞を受賞した『猫と罰』の著者・宇津木健太郎さんに、新潮文芸振興会の佐藤隆信理事長から賞状と賞金が授与された。
佐藤理事長は冒頭のあいさつで、「毎年、想像もしないような展開をみせる作品と出会える同賞を楽しみにしているが、今回はとくにパワフルな作品に大賞を贈ることになった」と受賞作を紹介し、「禁断の最終兵器ともいえる猫を使った(笑)、とても楽しいお話なので、皆さんに喜んでいただけると思う」と話した。
続いて、選考委員を代表してヤマザキマリ氏が講評を行い、最終候補作品について「選考委員の評価が大きく割れたが、それだけ4作品とも力作揃いだった」と選考過程を語り、そのなかで大賞は「一番ユーモラス性があったこと」が決め手となって3人の選考委員の意見が一致したことを明かした。
「ファンタジーは自由の象徴。ひとつのテンプレートにとらわれず、大いに奇想天外な発想で作品を生み出してほしいと望んでいるが、昨今は嗜好性が高いキャラクターを出す方向に偏りやすい気がしている。そんななかで宇津木さんの作品は斬新だった」と称えた。
また、「猫好きの私にとって気に入ったのは、猫の目線から人間社会を描いている点。まるで救済する天使のような存在として常に人間のそばに君臨している猫の素晴らしさが伝わってくる」と作品の魅力を語った。
受賞のあいさつに立った宇津木さんは、同作品の執筆にあたり「創作に対して真摯で真っすぐでいたい」という思いとともに、「自身の創作に関する物語を主題として作品を書いた」と振り返った。
「読者の方、とくに小説家を目指している方が、自分の創作論に対して自信をもって新しい作品を生み出してほしい」というメッセージを込めたとし、「最終的には、『猫と罰』を読んだことで誰かの創作活動につながったというような声がいつか届くことがあれば、何よりもこの小説のテーマに沿った良い結果になると思う。たくさんの方に読んでいただければうれしい」とスピーチし、大きな拍手が送られた。
大賞受賞作『猫と罰』は、単行本として新潮社より6月19日に発売されている。
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