筑摩書房・三鷹市は6月14日、第40回「太宰治賞」の贈呈式を如水会館(東京・千代田区)で開催した。応募作1405篇の中から市街地ギャオ氏の「メメントラブドール」が受賞し、正賞の記念品と副賞の賞金が贈られた。
初めに、三鷹市の河村孝市長があいさつ。三鷹市と太宰治の関わりについて触れ、昨年12月に太宰ゆかりの場所として親しまれていた跨線橋が老朽化のため取り壊されることになり、「渡り納め」イベントが開催されたことなどについて語った。三鷹市共催で行うようになって自身が3代目の市長であるとし、「今後も文学の振興に尽力し、太宰治を応援し続ける」と決意を述べた。
次に、筑摩書房の喜入冬子代表取締役社長(当時)があいさつ。うれしいニュースとして、これまでの受賞者たちが昨年から今年にかけてさまざまな文学賞を受賞したことを紹介した。「40回まで続けていることの成果が、太宰治賞でデビューした作家の活躍といういちばん良い形で表れている」と話した。「一方で、自治体の4分の1に本屋がないという衝撃のニュースもあった」とし、「作品と読者が出会う場所が今後も維持されていくことを願い、本屋と共に頑張りたい」と語った。
選考委員の一人、奥泉光氏が講評を行った。市街地氏の作品は、ネット用語がたくさん出てくるため「理解に時間が掛かる読みにくい作品」としながら、「難しい漢語や禅語が出てくる夏目漱石の『草枕』と似たようなもので、ある意味正統的なやり方と言ってもいい」と評価。「読むのは大変だが、徐々に奥行きが感じられ、立ち上がってくる物語がある」とし、太宰治賞は「良い作品を得ることができた」と作品を称えた。
市街地さんは、敬愛するアーティストの言葉を引用して「言葉は借り物で借りた後は返さなければいけない」とし、「これからも書くことで、この世界から借りてきた言葉を小説に返していきたい」と受賞を喜んだ。
その後のパーティーでは、選考委員の中島京子氏が乾杯のあいさつを行った。受賞作のほか、最終候補3作は、6月19日に発売された『太宰治賞2024』に収録されている。
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