公益財団法人辻󠄀静雄食文化財団は8月21日、食に関わる出版物や作品、活動、人物を顕彰する第14回「辻󠄀静雄食文化賞」の贈賞式を辻󠄀調理師専門学校・東京(東京都小金井市)で開催した。今年度の同賞には、柴田書店刊行の『古くて新しい 日本の伝統食品』が選ばれ、著者の陸田幸枝さんらに記念の賞状などが贈られた。
同賞は、食分野の教育と研究に生涯を捧げた辻調グループの創設者、辻󠄀静雄氏の志を受け継ぎ、2010年に創設。日本の食文化の幅広い領域に注目し、めざましい活躍をし、新しい世界を築き上げた作品、個人・団体の活動を表彰している。12年からは新たに専門技術者賞も設けている。
贈賞式の冒頭、同財団の辻󠄀芳樹代表理事が登壇し、「本日は、来年4月に開校予定の辻󠄀調理師専門学校の東京校にお越しいただき感謝申し上げる。コロナ禍を経て、久しぶりに皆さんと同じ空間に集うことができる喜びを感じている」とあいさつ。
受賞した柴田書店刊行の『古くて新しい 日本の伝統食品』についても触れ、「日本各地の風土と結びついて、継承されてきたさまざまな食品の加工技術を網羅的に紹介した、大変な労作だ。私はぜひこの本を海外の人たちに知っていただきたいし、日本人こそが読むべきだと思っている」と高く評価した。
そのうえで、「食に関わる社会や環境の変化はますます加速している。その中で、今回の受賞作、受賞者は自らの体や感覚を働かせて、人や自然と交わり、時間をかけて紡ぎ出していくという『価値』を強く感じさせてくれる。これからもこの賞を通して、優れた作品や仕事を顕彰していきたい」と支援、協力を呼びかけた。
『古くて新しい 日本の伝統食品』は、日本の風土の中で育まれてきた伝統的食品を訪ねて各地を旅し、丹念に取材。その歴史や成立ちや製法を、製造工程を含む多数の写真とともに紹介している。
選考委員の石毛直道氏(国立民族学博物館名誉教授、文化人類学者)の講評に続き、著者の陸田さん、写真家の大橋弘さんに賞状などが手渡された。陸田さんは「私たちの地味な仕事に目を留めてもらい、素晴らしい賞をいただき感激している」と話し、取材時の苦労や裏話を紹介。「何百年後かにこの本を開いた人が『昔の人ってけっこうすごいじゃん』と思ってくれたら、こんなにうれしいことはない。この本を未来へとつなげていくのに、(今回の受賞が)大きく背中を押してくれた」と喜んだ。
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