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【書店探訪】独創的な店づくり こんな本屋あってもええやん! 明屋書店ユートピア野間店(兵庫県伊丹市)

独創性あふれる店づくりで存在感示す明屋書店ユートピア野間店

 神戸と大阪のベッドタウン兵庫県伊丹市で、ロードサイド店として売場面積86坪(駐車場16台)で店舗を構える明屋書店ユートピア野間店。一歩足を踏み入れると、そこはまるで「本に囲まれた迷路」のよう。独創的な店づくりで地域住民に長く愛され、訪問する出版関係者も「いつ来ても面白い」、「退屈させない」、「また見に来たくなる店」と感嘆の声をあげる。その秘密に迫るべく同店を取材した。【堀雅視】


トイレにも!?

 ロードサイド店が隆盛を誇っていた1986年、愛媛県を中心に全国展開する明屋書店のフランチャイズ店としてオープン。雑誌の豊富さに定評があり、最盛期には3店舗まで拡大した。その後、ネット書店の台頭、雑誌の低迷、ロードサイドから駅ナカ(チカ)、商業施設内が主流に移行するなど売上は下降をたどり、野間店以外の2店舗を閉店。当時のオーナーが独自経営を断念し、2012年、明屋書店の直営店となった。


 立て直しを託されたのは、オープン2年目に入社した西川定義さん。28歳で店長に就任した西川さんが直営店移行後も引き続き舵取りを担うこととなった。


 キーワードは「ユニークなPR」、「独自サービス」、「注力商品の見極め」の3つ。まずは「ユニークなPR」。道路沿いの壁一面には、同店でのランキング上位作品の拡大表紙を全面に貼り出し、通行人は思わず足を止めてしまう。コミック、文庫など主要ジャンルを「店内」で貼り出すケースは見られるが、同店は1週間スパンでライトノベルまでを貼り替える。台風のとき、飛ばされたこともあったという。

独自ランキングを壁一面に貼り出し、通行人を誘引


 店内は、昭和の小売店で多く見られた天井から吊り下げた手作り広告が目を引き、売場は西川店長の「商品は置けるだけ目いっぱい置く」の方針のもと、過密に本が並ぶ。来店客からは「まるで秘密基地」、「迷路」、ディスカウントストアの「ド〇・キ〇ーテみたい」といった声が聞かれる。西川店長は「広さが限られる中、こちらの都合で品揃えをしていては、お客は離れていく。『期待に応える商品構成』、『必要なものはとにかく仕入れる』、スペースをどうにかつくって『何とか置く』ということを常に考えている」と語る。

天井からも「これでもか作戦!」

実体験から顧客心理つかむ

 極めつきはトイレ。外壁同様、壁一面、手作りポスターで埋め尽くす。西川店長が「PR方法などのアイデアは彼女に任せている」と全幅の信頼を寄せる副主任の岡崎三恵さん。岡崎さんは「自分が外出先のトイレでも、壁に貼ってあるポスターやチラシが気になる。『これ、売場で確認しよう』という心理になるので当店でも実行してみた」とし、実際、来店客から「トイレに貼ってあった本はどれ?」など聞かれることも多いという。

小便器周りにも徹底的に!「目のやり場に困る!?」
女性用トイレには小学館提供のクラフトを活用し、『NEOのクラフトぶっく』をPR(台紙は自作)

 外壁の独自ランキングについても「まずは入ってもらわないと店の良さをわかってもらえない。これだけ貼れば通行している人は目が向く。その中の何%かでも『本を見てみよう』という人がいて、当店のファンになってくれたらうれしい」と狙いを話してくれた。


 次に「独自サービス」。少子化のなか、同店独自で、「『コロコロコミック』ガラポン抽選」や、『うんこドリル』、『サバイバルシリーズ』、『ノンタン』などの「オリジナルくじ」、『ちゃお』、『りぼん』、『なかよし』購入者に「おたのしみ袋プレゼント」、文具購入者の抽選といった試みを20年以上続け、これらの施策が奏功し、数年前には『ちゃお』の売上部数が明屋グループトップを獲得した。

プレゼントを楽しみに毎月多くの子どもが来店

訪問者の驚く姿に喜び

 一方で真逆のジャンル、成人作品も強く、成人雑誌をはじめ、「フランス書院文庫シリーズ」も他店を圧倒する部数を売り上げている。西川店長は「地域の犯罪抑止に少しは役立っているのでは」と笑う。自店の強みを認識し、これらの商品は徹底して品揃えを強化する。キーワード3つめの「注力商品の見極め」につながる。

根強い人気の成人雑誌は充実した品揃え


 また、雑誌などによく見られる「本日発売」の表示。同店は西川店長の発案で「昨日発売」、「一昨日発売」と変化させ、ユーザー目線で「わかりやすく」を追求する。

 各出版社による、飾りつけ、自作POP、工夫を凝らしたレイアウトなどを表彰する企画では強みを発揮し、東京ディズニーランド招待、高級ホテル宿泊、大型テレビの副賞が贈られるなど数々の実績を持つ。

佐々木良作品(万葉社)を手づくりレイアウト

 西川店長は「デジタルサイネージなども否定はしないが、長年、このやり方で地域のお客さんに受け入れられている。業界関係者など書店に詳しい人が初めて当店を訪れて驚く姿を見るのが何よりうれしい」と今後もオリジナリティあふれる店づくりに邁進していくとした。

西川店長(左)と岡崎さん

明屋書店ユートピア野間店

所在地=兵庫県伊丹市野間北3-2-2
電 話=072(770)2100
営業時間=10~22時/年中無休

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