著作権の権利者団体である日本雑誌協会、日本写真著作権協会、日本書籍出版協会、日本新聞協会の4団体は8月17日、生成AIに関する著作権保護をめぐる共同声明を発表した。
共同声明は「生成AIと著作権の保護に関する検討が不十分な現状を大いに危惧する」としたうえで、日本の著作権法が諸外国に比べてもAI学習に極めて有利であるなど問題が大きく、「著作権法が目的とする文化の発展を阻害する恐れがある」と指摘。「著作権法改正の必要性を見極める必要があり、技術の進化に合わせた著作権保護策があらためて検討されるべきだ」とし、権利者団体と関係当局の意見交換の場が設けられることを求めている。
4団体による共同声明は次の通り。
近時、生成AIが注目を集めています。社会の様々な場面で利便性を向上させる技術として期待を集める一方で、偽情報の拡散や個人情報の漏洩を招く恐れがあるほか、著作権者の権利が侵害されるリスクが強く懸念されています。私たちは、生成AIと著作権の保護に関する検討が不十分な現状を大いに危惧しています。
現在の生成AIは、AIに学習させる大量の著作物データなしには機能しません。多くの場合、これらのデータはネット上のクローリングにより著作権者の同意取得や対価の支払いなしに収集され、その解析結果に基づきコンテンツが生成されています。日本の著作権法第30条の4が諸外国に比べ、AI学習に極めて有利に作られていることは大きな課題です。同条のただし書きでは「著作権者の利益を不当に害する」場合は学習利用できないとされていますが、その解釈は明確ではなく、また海賊版の学習利用も禁止されていません。権利侵害コンテンツが大量に流通する恐れがあるにもかかわらず、著作権者に対する実効的な救済策は何ら示されていません。
このため、以下のような事態が生じて、著作権法が目的とする文化の発展を阻害する恐れがあります。
・学習利用の価値が著作権者に還元されないまま大量のコンテンツが生成されることで、創作機会が失われ、経済的にも著作活動が困難になる。
・海賊版をはじめとする違法コンテンツを利用した、非倫理的なAIの開発・生成が行われる。
・元の作品への依拠性・類似性が高い著作権侵害コンテンツが生成・拡散される。AI利用者自身が意図せず権利侵害という違法行為を行う可能性がある。
著作権法第30条の4は2018年の改正でつくられましたが、当時、生成AIのような高度なAIの負の影響が十分に想定されていたわけではありませんでした。
第30条の4ただし書きの解釈を明確にし、著作権法改正の必要性を見極める必要があります。
また、創作活動で生成AIを活用するにも責任が伴います。生成物に権利侵害リスクがあるままでは、安心して生成AIを補助的に活用することもできません。
生成AIが文化の発展を阻害しないよう、技術の進化に合わせた著作権保護策があらためて検討されるべきだと考えます。
私たち権利者団体と関係当局の間で意見交換を行う場が設けられることを望みます。
以上
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