NPO法人「報道実務家フォーラム」と、スマートニュースの子会社でノンフィクション、調査報道の新しいエコシステムづくりを目指す「スローニュース」は8月9日、すぐれた調査報道を顕彰する「調査報道大賞」の第3回授賞作品を発表した。
授賞作は、期間中に応募・他薦された90件の作品の中から、報道実務家フォーラムに2017年以後参加した報道実務家による投票と、選考委員会による審査を経て選ばれた。
今年度の大賞には、週刊文春の「ジャニーズ事務所・ジャニー喜多川少年たちへの性加害の一連の報道」と、神戸新聞の「神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道」の2件が選ばれた。
週刊文春の報道は、「深刻な問題を発掘し、裁判を起こされたが勝訴し、事実関係が確認された価値は大きい。この報道はBBCの報道につながり世界的な議論を起こすことにもなった。もしこの報道がなければどうなっていただろうか。すぐに結果が出ずとも重要な役割を果たす調査報道の典型とも言える。一方で、他メディアの沈黙も映し出すこととなり、ジャーナリズムの在り方を考えることにもなった」と評価された。
神戸新聞の報道は、「公的記録の保存が日本において喫緊の課題であることを浮き彫りにした。歴史に残る社会的重大事件であっても文書が廃棄されてしまうのは、もはや日本の宿痾(しゅくあ)とも言える状態であることを印象づける報道といえる。地元における過去の大事件を風化させず、地道に取材と報道を続ける中で、記録廃棄の事実を知った際、これは重大な事実と判断。ニュースバリューを的確に見抜いていた。一連の報道の中では、遺族との関係を長く結んでいた地方メディアならではの役割を示していることにも注目したい」と評価された。
優秀賞(全国紙・雑誌部門、地方紙・専門紙部門、デジタル部門、映像部門別に選考)は次の通り。
▼優秀賞 全国紙・雑誌部門
▽JAグループの不正を巡る一連の報道(週刊ダイヤモンド/ダイヤモンド・オンライン)
▼優秀賞 地方紙・専門紙部門
▽全国郵便局長会による会社経費政治流用のスクープと関連報道(西日本新聞)
▼優秀賞 デジタル部門
▽「長年にわたる統一教会問題の取材活動」(鈴木エイト氏)
▼優秀賞 映像部門
▽「ルポ死亡退院~精神医療・闇の実態~」(NHK)
▼データジャーナリズム賞
▽「みえない交差点」(朝日新聞)
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