京都府書店商業組合(犬石𠮷洋理事長・犬石書店)と、滋賀県書店商業組合(平井浩理事長・文平堂)が合同主催で著者イベントを実施した。参加条件は書籍購入に加え、全国でも珍しい「有料制」を導入したが、予想以上の集客と参加者の好反応を得られ、関係者は今後のイベント開催のあり方に手応えを感じている。
組合加盟のメリット示す
2月3日に催されたイベントは、2014年に『聖なる怠け者の冒険』(朝日新聞出版)で第2回京都本大賞を受賞した森見登美彦氏の最新作『シャーロック・ホームズの凱旋』(中央公論新社)の刊行記念トークショー。ゲストに、デビュー作『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が10万部を突破、新作の『成瀬は信じた道をいく』も期待が高まる注目の作家、宮島未奈氏を迎え、対談も行われた。
『シャーロック―』は京都が舞台ということで、出版社サイドから京都で複数店舗を展開するふたば書房にイベントの提案がもたらされた。洞本昌哉社長は京都組合の副理事長も務め、「会場を借りて書店組合主催で実施したい」と逆提案。出版社も「森見先生なら大きな会場でも集客できる」と見込み、構想がスタートした。
洞本氏は取材に「イベントは当店だけでもできないことはないが、みなさん懸命に努力して京都関連本を売っている。組合加入の是非も指摘されるなか、加入のメリットを示したかった」と単独開催から組合合同主催に切り替えた意図を説明する。
準備を進めるなかで、滋賀県が舞台の『成瀬は―』とも連携したいと要望があり、滋賀組合にも打診。両著者とも関西在住で互いの作品をリスペクトしていることもあり、開催が実現した。
人気作家のパワー実感
会場はJR京都駅前の「キャンパスプラザ京都」。両著者の知名度、作品の人気、そして会場費などのコストを鑑み、参加条件は両氏の新刊どちらかを購入+参加費1000円に設定。これら概要をまとめて参加書店を募った。
当初は書籍購入者からさらに参加費を徴収することに難色を示した書店もあったというが、イベント情報を耳にした来店客から問い合わせがあるなど反響は大きく、15書店が参加を表明した。
定員200人で募集を開始したところ、事前の店頭ポスターやSNS告知が奏功し、初日に170枚が購入され、220枚を超えた時点で受付を締め切った。また、人気作家の新刊ということで、配本面において出版社、販売会社ともイベント趣旨の説明や話し合いを重ね、万全な仕入れ体制を整えたという。
洞本氏は「この手法なら『うちはイベントなんて無理』と言われる小規模書店でも開催できる。マージン30%運動が進められているが、今回、チケットの粗利は40%。第三商材に次ぐ4番目の収入源としても可能性が広がる」と話す。
当日の盛況ぶりについて、「書店は作家の吸引力を低く見過ぎている。千円払っても話を聞きたいというファンは多い。作家は東京だけじゃなく、全国にいる。ローカル書店の存在感を示す一手になれば挑戦した甲斐があった。今後も地方書店活性化のアイデアを積極的に提言していきたい」と語っていた。
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