出版社による書店への販売促進は、これまで訪店営業とともに注文書などをファックスで送る方法が中心だったが、書店側では大量に送られるファックスを削減したいという思いも強い。書店にとってどのような販促方法が望ましいのか。紀伊國屋書店店売総本部販売促進本部長兼店売推進部長・葛城伸一役員待遇と、長年店舗に在籍した同販売促進本部販売促進部・松本麻子次長兼和書仕入課長に、文化通信社が運営する販促情報提供サービス「BookLink PRO」の活用なども含めて話を聞いた。
ファックスは仕分け・用紙費用・誤送信など問題
――販促情報の受信方法はいかがですか。
松本 チラシや注文書を、ファックスやメールで送っていただくことがほとんどとです。我々も見慣れていますし、文字の羅列だけではなく視覚に訴えるものがないと、注文しようという意識は湧いてきませんので。
ただ、いまはサイトで情報を得ることも多いです。店頭などでは常にPCを見ることができなかったりしますが、ネットなら発注に直結できるのでメリットがあります。
――ファックスはどのように処理していますか。
松本 直接担当者が手にするわけではなく、まずは誰かが仕分けします。大きな店なら総務担当者が 各ジャンルのボックスなどに入れます。新宿本店では各階で受けるほか、総務課で受けたものを売場に振り分けしています
なので、紙でもPCファックスでも、着信してから担当者の手に渡るまでワンクッションあります。仕分け違いで行方不明になることもあります。
また、仕分けた後に担当がすぐに見るとは限りません。その日のうちに見ればいいほうで、週末に一括で見るなど、寝かせてしまう時間があり、即時性のある情報を見過ごしてしまうこともあります。
――いろいろなジャンルに跨がるチラシもありますが、コピーして分けたりしますか。
松本 新刊が全て入っていると分けようがないので、仕入れ担当か店長に渡す店舗もありますが、コピーして担当者に分けるまではできません。
新宿本店では、仕入経由で該当売場のボックスに入れたり、分野が跨る内容のものは新刊会議で渡したりします
本部で受けたものを店と共有する場合は、紙はコピー機でスキャンして、メールで来るものはダウンロードして社内イントラの担当者が分野ごとの掲示板にあげています。
1日で用紙1束なくなることも
――ファックスはどれくらい来ますか。
葛城 本部では、出版社に全員が見る共有メールアドレスをご案内しているので、PDFで送っていただくケースが増えていて、以前に比べるとファックスはだいぶ減りました。ただ、共有メールは大量になると見逃してしまうことも多く、「BookLink PRO」の参加出版社がさらに増えれば、ここで集約できないかと考えています。
松本 店舗では共通アドレスに送ってもらうケースはほとんどありませんから、まだ紙が多いです。受信件数が多い店舗では用紙が1日に1束(500枚)なくなったこともありました。
――紙を廃棄するだけでも大変ですね。
松本 ファクスのボックスがパンパンになって、時間が経ってしまいそのまま処分してしまうこともあります。
用紙も以前は裏紙を使っていましたが、 紙詰まりの原因になるので、いまは使いません。白紙をそのまま使い廃棄しています。
葛城 ファックスは誤送信の問題もあります。社内ルールでファックスを登録する際も送るときも必ず2人で確認していますが、そういう意味でも、できればファックスは避けたいです。
ただ、ファックスに換わるものがありません。ファックスをやめたとしたら、情報が来なくなるという恐怖感があります。「BookLink PRO」を利用する出版社がさらに増えて、ファックスの換わりになるといいと考えています。
電子発注につなげたい
――望ましい販促情報の提供方法を教えてください。
松本 情報を見たらすぐに発注できる流れが必要です。そのためには、発注サイトにつなげる必要があります。ファックスでは注文が届いたのかも、保留になったのかもわかりません。ネットの情報から電子発注につながる方が確実です。
――最近はSNSなどで話題になることが多いですが、常にチェックしていますか。
松本 店舗も本部も決まった人間がウォッチしてるわけではなく、気づいた人が共有します。むしろ当社の「PubLIne」やネット書店のランキングで伸びている商品があると、SNSを調べます。若い人たちは元を探るのが上手いですから、それを本部と共有したり、メーリングリストに入れてもらうことが多いです。
――どんな情報が役に立ちますか。
松本 確実に動くのは映像化の情報です。どこかのお店で仕掛け販売をしたら動いたという情報は、展開する店舗によって客層が変わるので、仕掛けるかどうかの判断は各店舗です。あとは重版情報などでしょうか。
――発注しやすい販促物は。
葛城 ダイヤモンド社の注文書が優れていると思います。毎週月曜日に送られてきて、シンプルですが、見やすくデザインされていて、フォーマットが変わらないので、見るべき場所が決まっていてわかりやすい。
しかも全国で書店勉強会を開いて、「時間がなければここだけ見てください。時間があればこちらも見てください」とポイントを徹底して伝えてくれます。ですから発信側と受け手側が共通理解のうえで見ています。
幻冬舎のように在庫あり商品なら確実に中2日で取次搬入すると打ち出している出版社は助かります。いつ入るかが明確になると無駄な発注もなくなります。
「BookLink PRO」から受注サイトへ
――「BookLink PRO」に対する期待があればお願いします。
葛城 まず発注サイトへの窓口ですね。複数の発注サイトにそれぞれ多くの出版社が入っていますから、「BookLink PRO」に行けば情報を得られて、そこから各受注サイトにつながる窓口の役割を望みます。
また、ジャンルで絞り込んだり、チラシを保持する機能などは便利だと感じます。発注サイトでは大まかなジャンル分けしかないので、入ってからもう一度、自分の担当ジャンルを探さなければなりませんが、「BookLink PRO」は細かく絞り込めるので、最適な情報に素早くアクセスできます。
さらに、立地や地域でも絞り込めるので、大型店や郊外店などそれぞれの店舗で必要な情報にアクセスできます。 それを使う側がカスタマイズすればいいと思います。
松本 こうした情報は出版社がタグ付しているので、タグの付け方で出版社の意思もある程度わかります。タグで必要な人に届くような工夫をしてもらえるといいですね。
あと、共同受注サイト「Bookインタラクティブ」や「S-BOOK」では各出版社のサイトにも行けるので、「BookLinkPRO」も入れていただくと良いですね。
――ありがとうございました。
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