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【インテージテクノスフィア】2023年度「産学連携PBLプログラム」 合同成果報告会

会場の様子。各チームの指導教員と学生のほか、来賓も出席した

 インテージテクノスフィアは3月12日、東京・千代田区のインテージ秋葉原ビルで「2023年度産学連携PBLプログラム 合同成果報告会」を行った。プログラムに参加している金沢工業大学、高知工科大学、実践女子大学から各1チーム、東京理科大学から2チームの全5チームが参加し、「大学生の視点で、大学生が書店に行きたくなる仕組み」の提案を発表した。同プログラムの実施は7年目。今回は初めて来賓が招かれ、出版や書店関係者など7組が発表を見守った。

 PBLとは、Project Based Learningの略で、課題解決型の学習法のこと。インテージテクノスフィアは、統計やデータ解析の授業を展開する大学を対象に2017年からPBL支援を無償で行っている。学生は、同社が提供するマーケティングデータを中心に、独自に調べたデータなども活用して分析を行い、与えられたテーマの解決策を導き出す。アイデアのプレゼンテーションは、分析結果などをスライドで示しながら15分(うち質疑応答5分)で行った。

4大学5チームが課題解決策を提案

 金沢工業大学の情報フロンティア学部心理科学科は、「書店がつなぐ、本との出会い」と題して、「大学図書館と書店の合併」を提案した。まず、大学生の読書事情についてデータを提示しながら紹介。本を購入しない理由の2位「図書館で借りて読んでいるから(26名)」に着目した。大学生が本を購入せず図書館を利用する理由の一つ「どんな本を読めばいいかわからない」という点にも注目し、“つなぐ本屋”を提起。大学図書館と書店、学生がつながる仕組みとそれぞれのメリットについて図版で説明した。

 高知工科大学経済・マネジメント学群とシステム工学群のチームは、「五感で楽しみ語感を養う」と題し、まず現状を定義。そもそも本は読まない、読書は“苦”という学生に向けて、「『五感』をフル活用して書店を満喫」させたり、「書店での滞在を通して『語感』を養うきっかけ」をつくったりすることを目的に、書店で「書籍内容のプレゼン&フリートークイベント」を行うアイデアを発表した。

 実践女子大学人間社会学部竹内光悦ゼミは、「運命の本と出会える書店へ」と題し、「本に魅力を感じていない」「書店に訪れる習慣がない」という学生の現状を洗い出した。読書をしない理由として映像のほうが内容を理解しやすいこと、試し読みやあらすじを知りたいなどの回答を基に、書店内に設置する「Book SELECT BOX」を提案。BOXに入室して料金を払うと、その日の気分や性格に合わせAIによる本の処方せんを発行、処方された本を基にあらすじの音声朗読と生成AIのイメージ映像をBOX内で提供するという施策で、SNS投稿キャンペーンの拡散アイデアも合わせて提案された。

 東京理科大学は、必修授業として毎年9月から4クラス8組、合計32チームという大規模で本プログラムに取り組んでいる。そのため、A班・B班の2チームで参加することとなった。

 A班は、①サービス面、②宣伝面、③顧客面(学生)の三方から検討。調査結果を基に、大学生書店会員制度の導入を提案した。アプリによる会員証で、来店ポイントや購入ポイントの付与・利用、会員同士で本の情報を共有することなどを発表した。中古本が好きというメンバーの提案により、新書を購入すると好きな古書を1冊プレゼントするというアイデアも披露した。

 B班は、目的変数を用いて分析を2回試みた。分析結果を基に、旅行ガイドブックを購入すると特別価格で旅行ができる学生旅行コンサルティングサービス「書店×学生旅行」と小説好きな学生向けのポイントサービスアプリ「tobira」の2つを提案した。

 各チームの発表後は、質疑応答時間が設けられ、他大学の教員や来賓からの質問に答えた。

課題に関連する企業が来賓として参加

 次に来賓それぞれから講評が行われた。未来屋書店の田坂氏は、「そもそも本を読まない人を書店に呼ぶというのは不可能ではないかと思っていた」とし、「読んでいる人がなぜ本を読むのかというデータがむしろ参考になった」と語った。日経BPマーケティングの橋田祐孝氏は「現状、新聞は本以上に深刻」として、学生に日経新聞の購読について問いかける場面もあった。「神保町ブックフェスティバルには若い人が大勢来ているが、書店に行かない、本を買わないという学生とのギャップは何か、本を読む環境を学生に与えるにはどうしたら良いか」考えさせられたとし、「参考になった」と話した。

 各大学の教員の審査により、最優秀賞に実践女子大学、優秀賞に金沢工業大学と東京理科大学B班、奨励賞に高知工科大学と東京理科大学A班が選ばれ、インテージテクノスフィアから賞状が授与された。

 今回、来賓の投票による「最もビジネス課題を解決でき得る」発表に贈られるベストビジネスソリューション賞も設けられた。受賞した東京理科大学B班には、JPIC(出版文化産業振興財団)専務理事の松木修一氏が賞状を授与。来賓から提供された副賞も贈られた。松木氏は「今日提案されたことが今後実現されるかもしれない」とし、「ぜひ書店に足を運んでください」と話した。

 報告会終了後は交流会が行われた。優勝した実践女子大学を指導する人間社会学部学部長の竹内光悦教授に話を聞くと、「ゼミの3年生11人が3チームに分かれて課題に取り組んだ」とし、前期後半の5週間でデータ分析を行うため、「夜中でもメールが届いた」と苦笑い。「卒業して社会に出ると、これほど集中して取り組むことは難しいので良い経験になる」と話した。

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