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小川書店(東京・港区) 教科書販売をもとに“本屋”維持 【コレが“ウリ”です!~独立系書店の創意工夫~】

街の書店らしい店構え

 独立系書店が生き延びるための“ウリ”やノウハウを紹介する連載第6回。東京・港区で、教科書関連の“副業”で街の書店を維持する小川書店の取締役社長・小川頼之さんに話を聞いた。

【市川真千子】


全国の教科書をネット通販で販売

 白金高輪駅から徒歩3分、近隣に学校が多く立ち並ぶエリアで、1920年から経営を続ける小川書店。一見すると一般書籍や雑誌を扱う普通の書店だが、学校への教科書供給業務を広く行い、店舗でも教科書関連商品を数多く取りそろえる。在庫金額は約2000万円、売り場は22坪。社員4人とアルバイト8人が勤務する。

4階建ての自社ビル。1階が店舗、2階が倉庫。近隣にはマンションや学校が立ち並び、人通りが多い


 教科書供給業務を開始したのは1950年頃。周辺の交通が不便であった当時は集客が厳しく、売上について懸念した先代が参入を決めた。自社ビルの1階が店舗、2階が教科書倉庫となっており、毎年11月に供給会社から教科書が搬入され、2月まで保管。3・4月に供給業務のために雇用したアルバイトを指揮しながら仕分け梱包し、各学校へ搬入する。

2階の倉庫。教科書を保管し、梱包などの作業をする。繁忙期には天井の高さまで教科書がギッシリ積まれる。作業のため、業務用エレベーターが設置されている

 教科書の納入先は、小中学校28校、高校16校。ひとつ20㎏ある段ボールを1000個以上運ぶという作業にはかなりの体力が必要となり、供給業務から撤退する書店が多く人手不足の状態にあるという。「体力面で耐えられる人が一握りしかいない大変な業務。利益率も11%と少ないが、確実に利益が得られ、経営は安定する」と小川さんは話す。

 また、教科書と教科書準拠の参考書・問題集を小中学校全ての教科で店舗に在庫しているのが特徴だ。教科書は利益率が低く、かつ店舗で扱う場合は返品不可になるため、扱う書店は多くない。しかし全国の学校が採択するものをほぼ網羅することで、遠方の顧客も多く、教科書と学校採用品、そして教科書関連商品が利益の8割を占めている。

 そのために、店舗ホームページでは教科書と教科書準拠商品を全てインターネットで注文でき、近隣の学校については学校ごとに検索できるようデータベース化されている。遠方から買いにくる客がもともと大勢いたため、「お客さんにとって便利なものを作れば必ずもっと売れる」と考えた小川さんが、入社して即座にシステムを作成した。「4月はネット注文だけでかなりの利益になる」という。

一般書へつなげる売り場づくり

 店内の陳列における工夫も興味深い。売上の柱である教科書関連商品の棚が多くを占めるが、すぐそばに課題図書や絵本、学習漫画などの児童書が目に入るよう陳列。その横に小説などの一般書籍が続く。「教科書を買いに来店したお客さんの興味を次々とつなげていき、最後は一般書籍に行き着いてもらえるようなつくりにしている」と小川さん。「来店したお客さんの言動をよく観察して配置を考えた結果、このような形になった」と話す。また、流行のものではなく、本当に学びになる本を選書しており「そのほうが長いスパンで利益が出る」という。

教科書と教科書準拠商品がほぼ全てそろう
教科書棚のすぐ横に位置する児童書棚。流行のものではなく、学びになるものを選書している

 現状について、「本を売ることだけで食べていくのは難しい。教科書供給という〝副業〟の中に楽しみを見つけながら、売り場や接客をきちんと整えることで売上の減少を抑え、何とか書店を維持している」と語る小川さん。教科書を納入する高校などに売店も出店するが、こちらは採算が厳しいという。

 そんな中、自身が副理事長として活動する東京都書店商業組合で作成したYouTubeの書店紹介動画が、新たな気付きを呼んだ。動画を観て来店した客から感想を得ることが多く、「長年同じ場所で地道に経営を続けているというメッセージが、競争社会に疲れた人々に安心感を与え、店に引き付けている」と感じている。「店が与える安心感が、売上の底上げにつながっている。この安心感を崩さないような店づくりを続けていきたい」と今後について語った。

□所在地:東京都港区南麻布2-13-15
□仕入れ:日本出版販売、東京教科書供給

小川頼之さん

IT業界での勤務を経て、1999年に父親の経営する小川書店へ入社。2004年から取締役を務め、2012年3代目取締役社長に

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