河出書房新社は7月29日、2024年の企画について説明会を行った。今回は、5月に移転した東京・新宿区の新社屋でリアル開催とオンラインを併用して実施した。
冒頭、小野寺優社長があいさつに立ち、出版業界を取り巻く厳しい現状について言及した。「推し活」に代表される消費行動では、自分が価値を感じること（推し活）にはいくらでもお金を落とすが、価値を見出さないものにはお金を使わないということがあり、いつでもどこでも同じ価格で買える本は、「今しかないものを求める今の消費者にとって価値の低いものになってしまった」とし、「本の価値をいかに高めるかが課題」であると訴えた。
文芸書から大型図鑑、新規プロジェクトも
続いて、各担当者がそれぞれ新企画について説明した。『文藝』編集長の坂上陽子氏は、下半期の注目文芸書を紹介。よしもとばななの最新長編『下町サイキック』について、「既にSNSを中心に好評で、吉本さんの初期作品から好きだという人に非常に響いている」と話した。ほかに、デビュー小説で芥川賞候補となった向坂くじらの『いなくなくならなくならないで』や、10月発売予定の金原ひとみ『ナチュラルボーンチキン』、小川哲『スメラシング』など6作と、河出文庫の古典新訳コレクションを紹介。同コレクションの角田光代『源氏物語』は累計29万部を突破し、8月からオーディブル朗読版の配信が開始されることも発表した。
営業第2部部長の七澤博史氏は、9～11月に刊行される大型図鑑企画を発表した。最新CGと850点の図版を駆使した『古代ローマ帝国大図鑑』（A4変型／320㌻）、『シャーロック・ホームズの世界大図鑑』（A4変型／208㌻予定）、『気候と生態系でわかる地球の生物大図鑑』（281×235mm／376㌻）、『地球の科学大図鑑』（B4変型／208㌻）、世界を知る新しい教科書シリーズとして『数学大図鑑』（A4変型／352㌻）と『法の歴史大図鑑』（A4変型／336㌻）の2冊を紹介した。
営業第1部販売課課長の小尾友宏氏は大型本企画として、10月上旬発売予定の『美術の物語ポケット版』（四六判変型／1048㌻）を紹介した。同書は1950年の初版以来読み継がれている『美術の物語』9,000円（税別）のコンパクト版で、初回は刊行記念特価3,990円（税別）。海外印刷で増刷に時間がかかり、通常価格は4,990円（税別）となるため、「初回に十分な数を仕入れてほしい」とアピールした。
編集第2部第3課課長の渡辺史絵氏は、大型本企画として、11月発売予定の『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』（B4変型／2㌻＋ブックレット14㌻）を紹介した。来年70周年を迎えるカリフォルニアのディズニーランド・パークを「自宅にいながら楽しむことができる」と魅力を述べた。
編集第1部次長の中村孝志氏は、新規事業プロジェクトとして、カンザキイオリ『自由に捕らわれる。』、「文藝×monogatary.comコラボ賞」から生まれた短編小説集『白山通り炎上の件』（仮） 著・有手窓ほかを紹介した。アーティストで著者のカンザキさんから寄せられたメッセージとPVも会場で流された。また、コラボ賞大賞を受賞した表題作「白山通り炎上の件」にはYOASOBIが楽曲を書き下ろすことも決定しており、メンバーの2人からコメントも寄せられた。
編集第2部第1課の戸床奈津美氏は、10月29日に刊行される人気ボカロP・ピノキオピーさんのデビュー15周年の関連書を紹介した。数量限定の『ピノキオピー歌詞集＆画集 ANNIVERSARY BOX』、『ピノキオピー歌詞集 君が生きてなくてよかった』、『ピノキオピー VISUAL COLLECTION
2024-2009 PINOCCHIO』の3つを同時発売するピノキオピーさんからメッセージも寄せられた。
営業第3部広報課の鎌塚亮氏は、10月放映開始予定のオリジナルTVアニメ「魔法使いになれなかった女の子の話」の原案者・赤坂優月さんによる『魔法使いになれなかった女の子の話1・2』を10月初旬に刊行することを発表した。同書は、赤坂さん自身がアニメをノベライズした。飯塚氏は、同作の魅力を知ってほしいと訴えた。
世界的ベストセラー作家・ハラリ氏の新作を発表
経営戦略部の諸橋実生氏は、25年春に刊行予定のユヴァル・ノア・ハラリ『Nexus』（邦題未定）を紹介。英語版は今年の9月10日に発売、ドイツ語版、スペイン語版ほか、52言語で順次発行が予定されている（7月22日時点）。ハラリさんの著作は、世界で発行累計4500万部を突破しており、今作は6年ぶりの刊行となる。
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