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インタビュー

『ワカレ花』(双葉社)/けんごさんに聞く

大注目の小説紹介クリエイターが描く初小説
本の面白さを伝えるための新たな挑戦

 TikTokフォロワー28万人以上、総再生回数1.1億回を超える、今大注目の「小説紹介クリエイター」であるけんごさんが、自身初の小説作品『ワカレ花』を、4月に双葉社から刊行した。小説執筆に挑戦し、これからの小説紹介活動にも通ずる大きな気づきを得たというけんごさんに、同書の制作秘話や小説にかける思い、そしてともに読者の元へ本を届けていく出版業界人への熱いメッセージなどを聞いた。(聞き手:野中琢規)

小説執筆の決意

けんごさんは2020年11月から、若年層を中心に小説の魅力を伝えるための活動を行っている。

 TikTokをはじめ、InstagramやTwitterなどのSNSで、小説の読みどころや面白さを短くまとめたコンテンツを作って発信してきました。

 活動を広げていくなかで、作家さんや編集者さんなど出版業界の方とも知り合う機会があり、話していると軽く「小説書いてみたら?」と言われることもありました。ただ当時の僕は、一読書好きであり、小説は遊びでも書いたことはありませんでした。

 また、作家さんとのお話から、小説を書くことの大変さを感じていたので、ぽっと出のインフルエンサーの僕が軽い気持ちで商業出版して、努力されている多くの小説家の思いを踏みにじってはいけない、と思っていました。

しかし、多くの作品や作家と出会い、話を聞くうちに、小説執筆を前向きに考えられるようになっていったという。

 ちょうど活動一周年に近づいた21年の9月に、双葉社の編集者である渡辺拓滋さんから、改めて本気の提案を受けました。

 そこで再度自分の活動を振り返り、その根底にある「若い方など、これまであまり読書をしてこなかった人に、小説の魅力を伝えたい」という思いを再確認しました。

 そして今回、僕自身が小説を書くことで、読書を始める新たなきっかけになれたらと考え、小説執筆に挑戦しようと決意しました。

経験が生きた初小説

初小説『ワカレ花』は、“花”と“四季”をモチーフとした物語が絡み合う連作短編集となった。

 書き始めてからわかったのですが、僕は長い文章が書けなくて。SNSの投稿でも、要点を絞って簡潔に伝えることに自信を持っていましたが、今までの人生でもそういった経験が多く、逆に、何かを短くまとめられることが長所なのかなと、気づきました。

 さらに初期構想の段階から、「春夏秋冬」をテーマに物語を描きたい、2つの軸で物語を進めたいというアイデアがありました。やるからには単なる「思い出作り」ではなく、本気の作品にしたかったので、多くのことに挑戦した結果、連作短編集という形になりました。

新時代のクリエイターならではの創作手法も用いられている。

 今作でそれぞれの短編を書くにあたり、ある意味でこれは絶対僕にしかできないであろう、コメントからの着想方法を実践しました。

 ありがたいことに、僕のSNSでの活動には多くのコメントを頂くのですが、「こんなお話が読みたいんですがありますか?」といった質問もよく寄せられます。

 僕が小説の面白さを届けたい若い読者から直接コメントをもらえているので、せっかくなら自分が書こう!と、今回いろんなテーマで物語を描きました。

 特に、僕の主要なフォロワー層は女子中高生が多いので、彼女たちを読者と想定して、喜んで読んでもらえるような作品作りを意識しましたね。

全8編のエピソードにはけんごさんがこれまでリアル、そしてネットで出会ってきた多くの人や出来事も元になっている。

 SNSのコメントではほかにも、結構重たい相談をもらうことがあって。言ってしまえば画面上の赤の他人である僕が、「進路の決断」を委ねられたりするんですね(笑)

 それでも何かアドバイスをしたいと思った時に、高校教師を作中に登場させたことで、彼に自分の生き方を反映させて、考えをしゃべってもらったことで、とても伝えやすく感じました。

 また、いつもコメントをくれているフォロワーさんたちをモデルにしたキャラクターもいて、等身大の女子学生の本音の気持ちや価値観を反映できたかなと思います。

はまったパズルのピース

本や花など、自分の「好き」と、フォロワーの「読みたい」が融合した作品に仕上がったが、最もけんごさんらしい描写となったラストシーンは、意外にも一番最後に出来たという。

 結末についてはかなり悩みましたね。本編は大きく分けて二つの物語が進行しているのですが、そのラストシーンをどう描くかで一番苦労しました。

 読了後に、切なくもグッとくる場面にしたくて、編集者とも話し合い、色々と考えるなかで、まさに欠けていたパズルのピースが綺麗にはまるように、最後の最後にとても僕らしい展開が書けました。

 あとは、タイトルでも勝負したい!と思い、長いタイトル案を10案くらい出していたんですがなかなか決まらず。ずっと悩んでいたなかで、ある日ふっと「ワカレ花」というタイトルが降りてきました。

 これだ!と思い、そのタイトルをつけてから読み直すと、驚くほど本編にマッチしていて。本当にこれしか無かったんじゃないんかと思うほど、シンプルかつ、良いタイトルになったと思います。

出版業界を盛り上げる仲間として

小説家デビューを果たし、これからは小説紹介クリエイターの活動とともに執筆も続けていきたいと語るけんごさん。

 今回小説を書いて商業出版する、という経験を経て、改めて小説には著者と、そして周りの人のたくさんの色んな思いが詰まっているのだと実感しました。

 一冊の本を出すだけでも、数々の工程があり、長い時間をかけて、読者のもとに届けられているのだと思うと感慨深いです。

 そして、それを知ったことで、これからも一冊の本に込められた様々な思いを汲み取って、さらに小説の魅力を一所懸命紹介していきたいと思いました。

自身の活動が書店の後押しとなり、同書をきっかけにまた新しい読者に書店へ足を運んで欲しいと願う。

 書店さんにはものすごい力があると思っていて、書店で目当ての本以外に、全く思ってもみなかった本との運命的な出会いがあると思うし、本当に素晴らしい場所だと思います。

 本にまつわるエピソードもたくさん入っている小説なので、作中に出てくる『老人と海』をはじめ、いろんな書籍を一緒に並べてもらっても楽しいかもしれませんし、いろんな展開模様を見てみたいです。

出版業界の一員として、これからけんごさんがやりたいこととは。

 むしろやらなきゃいけないと思っているのは、本にまつわることをトレンドに押し上げていくことです。

 TikTokなどはトレンドに上がるとすぐにみんなが動画をアップして、同じコンテンツがどんどん広がっていきます。

 出版業界も、「本屋大賞」といった外からも注目されるイベントはあるので、それをもっともっと盛り上げて、トレンドにしていきたいと思います。

 同じ本好きとしてこれから一緒に頑張っていきたいです。よろしくお願いします!

初めてのサイン本作成時の様子。終始和やかな雰囲気ながら、気づけば終わっていたほどの手際の良さだったそう。

書店購入者限定のオンライントークショーを開催

 今回、新刊の発売に合わせ、文化通信社と協業し、全国書店で購入した読者限定で、執筆の舞台裏や創作過程での秘話などをけんごさん自身が語るオンライントークショーを6月3日に開催する(文化通信社主催)。

 購入読者は、購入時に各対象書店で入手する参加券に記載されている、QRコード等からアクセスし、当イベントの参加を申請することができる。詳細・対象書店はこちらの記事へ。


『ワカレ花』


四六判/232ページ/定価1375円

けんご

小説紹介クリエイター。スマホアプリ「TikTok」などのSNSで、わずか30秒ほどで小説の読みどころを紹介する動画を次々に投稿。作品の的確な説明と魅力的なアピールに、SNS世代の10〜20代から絶大な支持を得ている。2021年7月、30年以上前に発表された筒井康隆著『残像に口紅を』(中公文庫)を取り上げたところ、話題となり、年末までに11万部を超える大重版。他にも、小坂流加著『余命10年』(文芸社文庫)、楪一志著『レゾンデートルの祈り』(KADOKAWA)も、紹介をきっかけにヒットにつながり、出版関係者や書店員からは「日本でいちばん本を売るTikTokクリエイター」とも呼ばれている。

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