近年、巣ごもり需要などの効果で市場が広がり、注目を集めているオーディブック。ダウンロード販売サイトだけでなく、国内で唯一、書店へCDパッケージ版としても流通・刊行しているオーディオブック総合出版社のパンローリングは、昨年比2倍以上の増益、過去最高の売り上げを達成した。今勢いのある同社のオーディオブックについて、同社・マルチメディアコンテンツ制作部 部長の岡田 朗考氏の話とともに紹介する。
同社は1991年に創業し、投資家向けの出版やセミナー、復刊プロジェクトなど、ユーザーのニーズに合わせたさまざまな事業を展開している。オーディオブックの刊行は2006年から開始。国内の出版社100社以上と提携し、現在コンテンツ数は5500点を超える。なかでも昔話・童話が2500話以上、落語・怪談などの実演ものが1500席以上と、ジャンル日本一のコンテンツ数を誇っている。
合成音声の技術も進歩し、安価にある程度の音質を担保できる時代だからこそ、同社はナレーターにお任せで録音するのではなく、一字一句にわたり、テキストの本質的な意味合いをどのように表現すれば顧客の求めるものと一致させられるかを、常に追求していると岡田氏は語る。
パンローリングが手がけるオーディオブックの特長
1.コンテンツに合わせた制作方針
紙の書籍が、小説やビジネス書などそれぞれの内容に則した編集や装丁で作られているように、オーディオブックにもそのコンテンツに合った表現や演出が求められる。
同社のオーディオブックでは、読み手自身の表現だけに頼るのではなく、構造理解、要点の絞り込みを始めとした著者の訴えたいことと、手に取る顧客のニーズに相応しい人物像、語りかけ方を共に読解し、最大公約数としての演技・演出を行っている。時には複数人の声優でオーディオドラマ化したり、BGMや効果音で場面を彩ったりする。
2.丁寧なナレーション指導
同社のオーディオブック制作事業責任者として、企画制作のプロデュースから、レコーディング、演出などを統括している岡田氏は、独自の品質追求のために、俳優、声優、ナレーター、朗読家などの「演者」育成のためのワークショップなども主宰している。
ベテランから新人まで、「オーディオブック」というジャンルの声モノコンテンツを演じる上での必須の技術を徹底して教育し、さまざまな現場、コンテンツに対応できる人材を育成することで、コンテンツ自体の表現が大きく変わることが、同社の独自性につながっている。
3.幅広いラインナップ
オーディオブック化する書籍は、権利者や版元と相談し、利用者のニーズを鑑みながら、旬のものから、将来に残し広めていく価値のあるものを挙げ、出てきた候補の中からコンテンツがオーディオブックにマッチしているものを選んでいるという。
特に、昔話・童話や落語・怪談のジャンルは日本一のコンテンツ数で、子どもに小さい頃から正しい日本語を伝えることや、肉声でしか表現できない情感やニュアンスの音声化を重視していることもあり、これからも同ジャンルで多くの作品を展開していくという。
書店店頭での展開ポイント
書店にCDパッケージ版も流通させ、コーナー組みのきっかけや、書籍との併売で売り場を盛り上げることができるオーディオブックの、効果的な店頭展開について教えてもらった。
1.書籍とともに押し出す
既刊書籍をオーディオブックとして新たに刊行することで、同じコンテンツでも新商品としてアピールすることができる。ほぼ絶版となっていた書籍がオーディオブック化で火がつき増刷が決まったこともあるなど、埋もれていたコンテンツに新たに光をあてることが可能だ。
新刊書籍と近いタイミングでのオーディオブック化も、書籍の勢いをさらに増す第2波として押し出すことができ、書籍とCDを併売することによって、それぞれのユーザーにとって適した形態が選択肢として増え、売り伸ばしの機会も広がる。
2. “コト”を売る切り口
岡田氏によれば、小さいお子さんと一緒に聴くことで「親子で一緒に何かをする体験」として、新しい切り口の売り場作りができるという。
幼稚園、保育園でもすでに「聴く絵本」として導入され、「聴いて」から「描く」「話し合う」ためのツールとして活用されている。一緒にオーディオブックを聴いたあとに、絵を描いてみたり、内容や登場人物の言動行動に関して話し合ったりすることで、子どもの「想像力」や「聴く姿勢」「道徳や常識感」を育むことができるのも大きなアピールポイントだ。
試聴出来ます
『Le Petit Prince~あのときの王子くん~』
『人は話し方が9割』
『四谷怪談・皿屋敷・ 牡丹燈籠(日本三大怪談)』
岡田 朗考氏
パンローリング株式会社マルチメディアコンテンツ制作部 部長ディレクター/アクティングコーチ
「オーディオブックは、ただの情報の音声化や、朗読家が読みたいように読み上げた音声コンテンツであってはならない。パンローリングでは、出版社が、紙の書籍だからこそできる読書体験と同じように、音声だからこそできる手法で聴取体験を提供する義務があると考えています。
これからも、人ならではの読解力と、肉声ならではの可能性を信じ、拡げ、コンテンツを届けていきたいです。」
パンローリング株式会社
〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-9-18 第三雨宮ビル6F
Tel:03-5386-7396
Fax:03-5386-7393
会社HP:http://www.panrolling.com/
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