首都圏を中心とした主要書店で構成する「悠々会」は1月12日、東京・千代田区の帝国ホテル東京で新年会を開き、高井昌史会長(紀伊國屋書店)は厳しい環境にある書店、出版社、取次は原点にかえるべきだなどとあいさつした。
新年会はコロナ禍により着席で開催してきたが、4年ぶりに立食形式となり多くの出版関係者が参加。高井会長のほか、日本書籍出版協会(書協)・小野寺優理事長(河出書房新社)、日本雑誌協会(雑協)・堀内丸恵理事長(集英社)、日本出版取次協会(取協)・近藤敏貴会長(トーハン)、日本書店商業組合連合会(日書連)・矢幡秀治会長(真光書店)が新年あいさつを行った。
高井会長は「本屋さんは本を売るという原点に戻らなければならない。出版社は良い人材を集めて良い本を作っていく。取次は配本をしっかり行うこと」と指摘。返品を抑制するため配本を絞る動きについて「本を倉庫に置いておくのではなく店に出して売っていく。返品も工夫すればなんとかなると思う」と述べ、「地域で物流を動かして両取次が一緒に運べばいい。そういうことを出版社、取次、書店が徹底的に協議して、知恵を出して実行していかないとさらに大変な年になるのではないか」と持論を展開した。
続いてあいさつに立った書協・小野寺理事長は、能登半島地震で人々を勇気づけるメッセージを発した書店に触れたうえで、「出版業界の問題は山積しているが、全ては本がこれからも人々の近くにあり、誰でも多様な考えや創作物、知識に触れることができる社会を守り、本の価値を次の世代に受け継いでいくための課題。私たちはもう一度、出版という仕事に何ができるのか、何のためにあるのか。お客様が望む本との係り方はどういうものか。これまで本に触れてこなかった人々はどうすれば本に魅力を感じてくれるのか。どうすれば新しい才能が生まれ育っていくのかという基本的なとこに立ちかえり、直面する課題に取り組みたい」と述べた。
雑協・堀内理事長は、正月に読んだ浅田次郎氏の小説『一路』をあげ、「19 歳で参勤交代の責任者になった若者が、道中いろんな困難を乗り越えて江戸に向かう話。読み終わって心に残るのは、一所懸命の精神で武士の本分を果たす姿。我々も、出版社の本分を一所懸命の精神で果たしていくことで、皆さんとともに進んでいく思いを新たにした」とあいさつ。
取協・近藤会長は、まず被災書店の在庫問題について「被災された書店の商品の入帳という問題がある。取次は基本的にどんな商品であっても全て入帳し、書店にはご迷惑をかけないということを常にやってきた。出版社にも協力を心からお願いする」と協力を要請。
そのうえで、東北の学生を採用した際に、震災時の本との関係について質問したエピソードを紹介。「彼らが本によって成長したと思うと本の大切さを改めて感じる。しかし、その本が非常な危機にある」とし、業界団体の仕事にさらに注力する考えを示した。
日書連・矢幡会長は「今後、我々がどうなるのか想像できれば、何をすべきかわかるのではないか。組合としては正味、キャッシュレスの手数料、図書館の入札、万引き防止、IC タグなど課題はあるが、今年も皆様にお願いしつつ書店を継続していきたい」とあいさつした。
この後、日販グループホールディングス・吉川英作社長が、震災被災者への思いから無言で杯をあげ懇親に移った。
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