「情熱大陸」で話題!129万人登録の教育YouTuber
経済・教育格差下で知っておきたい勉強法
教育YouTuberとして活躍する葉一さんが配信する「とある男が授業をしてみた」は、登録数129万人に達する人気チャンネルだ。12月にフォレスト出版から刊行された『塾へ行かなくても成績が超アップ!自宅学習の強化書』で葉一さんは、学校や塾などから与えられた勉強ではなく、自分に合った勉強法を身に着けることの大切さを訴える。自宅学習がなぜ重要なのか、またなぜ塾講師としてのキャリアを捨て、無料の授業コンテンツを配信し続けるのか…2児の父でもある葉一さんの思いや取り組みは、ドキュメンタリー番組「情熱大陸」でも取り上げられ、大きな話題となった。 ( 聞き手 山口高範)
コロナ禍の時勢に合った本
新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言発令下で、子どもたちの学習環境が整っていなかったことが、本書執筆のきっかけだったという。
2020年4、5月に発令された緊急事態宣言を受け、学校を始め、学習塾など、各教育機関が一斉休校となりました。子どもたちが学ぶためのインフラが整っていない状況下で、担当編集の方から熱のこもった、本書企画の提案をいただいたことがきっかけです。本書は学校や塾だけではなく、自宅で自主的に学習する習慣を持つことがいかに重要かを説いた内容で、今の時勢にあった本だと思います。
本書では学校から言われたまま勉強するのではなく、自分なりに「アレンジ」することが重要だと説く。その真意とは。
自宅学習というのは、大人も子どもも関係ない。でも子どものころからその習慣を身につけておくことがとても大切で、それは大人になっても必ず役に立つと思います。そのためには、まず勉強法を自分なりに「アレンジ」すること。学校や塾から言われたことをそのままやるのではなく、自分に合った勉強法を見つけることが重要です。
例えば、子どもの学校の宿題で「音読」がありますが、私の子どもが通う学校では複数回の宿題が出ることがあります。でも私は「2回でいいよ」と言います。2回目でかっこよく読むことができたらそれでいい。そうなると子どもも本気で読もうとします。その本気が大切なんです。なにも回数を重ねることが正しいとは思わない。それは勉強時間についても同じで、長時間にわたって勉強すればいいというものではなくて、いかに決められた時間内で集中して学ぶか、それが大事なんです。
でも子どもは自分ではわからないこともあるので、親がアレンジしてあげる。親の立場としても、そういう関わり方の方が楽しめると思うんですよね。
学参・ドリルは「本屋」で「自分」で選ぶ
勉強法を自分なりにアレンジすることの重要さ。それは学参やドリルを選ぶときも同様だ。
塾などを選ぶときもそうなんですけど、口コミで決める親御さんが多い。でも教育や育児において正解はないですよね。ベストな方法があれば、みんなそれをやればいいけど、でも実際はそうではない。その子その子によって全然違う。それは勉強法だけでなく、参考書やドリルを選ぶときだって同じなんです。「みんながいい」という参考書が、必ずしもその子に合っているわけではない。だからネットではなく、本屋さんに足を運んで、自分で手に取り、実際に触れたときに、「これで勉強したい!」と直感的に思え、継続して勉強をできているイメージを持てるものを、「自分自身」で選ぶことがとても大切です。
動画にはない「本の力」
葉一さんは、ある中学生から寄せられたメッセージで、本を出すこと、本の力、その価値に気づかされたという。
動画、特にノウハウやテクニックのコンテンツは、複数回見返されることはあまりありません。一方で本は何度も読み返し、愛着を持ってもらえる。実はある中学生の子から「この本を試験会場まで持って行きました!」という声をもらって。その子にとって、この本は「御守り」のようなものだったんだろうなと。それもやはり本の価値であり、本が持つ力だと思います。そういった声を多数いただき、本当にこの本を出してよかったと実感しました。
本書はその子のような中学生をメインターゲットにしていますが、高校生や社会人の方など、「学ぶ」思いがある人すべての方に読んでほしいと思っています。
例えばこの本を子どものために買った親御さんが、勉強することの面白さを気づいてもらって、子どもたちとコミュニケーションできる風景を作ることができたら、こんなにうれしいことはありません。
YouTubeでも10代をメインに授業を行っていますが、一方で今、30代40代の女性で、手に職を持とうと看護学校を目指す人が多い。看護師試験で中高の数学が出るので、そういった方にも活用し、喜んでもらい、励みになっています。もともと世の中の役に立ちたいと思って、教育の仕事を目指したので、そういった方々から合格の御礼のメッセージなどをもらうと、本当にやっていてよかったと逆に励まされます。
▲1項目につき2~4頁で、どこからでも読める構成になっている
経済的な理由で学べない子どもたち
塾講師としてサラリーマン経験を持つ葉一さん。なぜ独立し、YouTuberとして無料で授業コンテンツを配信するようになったのか。
塾講師時代にどうしても授業料の関係で、夏期講習や冬期講習をあきらめたり、月謝が払えず、授業を受け続けること自体を断念しなくてはいけないような子どもたちをたくさん見てきました。中には面談のときに、塾のための預金残高を見せて、「こういう状況でどうしても講習会に参加できない」と訴えるシングルマザーの方などもいらっしゃって。でも一社員ではどうすることもできず、経済的な理由で、子どもの「学ぶ場」が奪われることへのもどかしさ、歯がゆさを常に感じていました。今でもそういった親御さん、子どもたち一人一人の顔が思い浮かびますし、塾講師の経験がなければ、今の私はないと思っています。だからこそ、YouTubeで無料配信することで、一人でもそういう子どもたちをなくしたいと思いますし、とても意味のあることだと思っています。
「点」ではなく「線」でほめる
共働きが一般的になり、教育や学習を「アウトソーシング」する家庭は少なくない。しかし葉一さんは学校や塾の先生や講師の言葉より、何よりも親の力が大切だと訴える。
コロナ禍以降、学習面におけるデジタル改革は、より一層進み、それゆえ教育における格差も広がると思います。だからこそ、自宅学習や自分で学ぶ習慣のない子は取り残されてしまう。今後、学校の役割も大きく変わり、同時に親の役割の比重が大きくなってくると思います。
そこで大切になってくるのが、親の姿勢です。学校や塾の先生からの一言より、親の一言は、その何倍も何十倍も大きい。親御さんの発言によって、大きなやる気を得ることもあれば、やる気を削ぐこともある。それを覚えておいて欲しいです。
まずは子どもをほめてあげること。そこからでいいんです。たった数分でできることです。その際、できれば「点」ではなく「線」でほめてほしい。以前できなかった問題ができるようになっていることをほめてあげる。君のことをちゃんと見ているよ、と。一方で、子どもたちも親の姿、言動などをちゃんと見ていますから。そうすることでお互いにもっと通じ合えるようになると思います。
四六判/208㌻/本体1400円
葉一(はいち)
教育YouTuber。2児の父。東京学芸大学卒業後、営業マン、塾講師を経て独立。「塾に通えない生徒が、自宅で塾の授業を受けられる環境を作りたい」という想いから、2 0 1 2 年6 月YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」の運営を開始。授業動画はすべて無料で、小中高生の主要教科とその単元を広くカバーし、自宅学習で志望校に合格する生徒が続出。メディアにも多数出演し、著書に『合格に導く最強の戦略を身につける!一生の武器になる勉強法』(KADOKAWA)などがある。
コメント