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インタビュー

「城塚翡翠」シリーズ(講談社)/相沢沙呼氏に聞く

ミステリ5冠「城塚翡翠」シリーズの続編が発売!

犯人の視点で探偵との対決を描く倒叙ミステリ

 ミステリランキング5冠に輝いた『medium 霊媒探偵城塚翡翠』。その続編『invert 城塚翡翠倒叙集』が7月7日に発売される。新作は犯人の視点から描かれた「倒叙ミステリ」の全3話からなり、探偵と犯人との心理戦や駆け引きがスリリングに展開される。もちろん前作に続き、強烈なキャラクター、こだわりぬいた物語の構成で、読者を翻弄し、魅了する作風は健在だ。(聞き手 山口高範)

『medium』執筆の背景

日常の謎を扱ったミステリを中心に活動していた相沢氏は、『medium』で初めて殺人事件がメインとなるミステリを手掛けた。なぜこのシリーズを書こうと思ったのか。

 シャーロック・ホームズとワトソンのように、個性的な名探偵と助手という「バディもの」の、本格ミステリをいつか書きたい、そのためには主人公である名探偵は強烈なキャラクターでなければいけないと思っていました。そして、ストーリーの面白さだけでなく、いかにインパクトを読了後の読者に提供することができるかを考えました。そのためにはこれまで描いてこなかった、殺人事件を扱うミステリの中でこそ輝く名探偵像を作り上げる必要がある、と試行錯誤しながら書き上げたのが一作目の『medium』です。
 ミステリにおける「どんでん返し」は、いろいろなものを犠牲にして成立するところがあるので、仕掛けるにはリスクも伴います。ですから『medium』については、どうしてもエピローグを入れる必要がありました。当時編集部では「エピローグはない方がいい」という声も出ましたが、このエピローグを挿入することで、ある種の「救い」になるような読後感を読者に提供できたのではないかと思っています。著者として、この終わり方が一番よかったと、今はとても満足しています。

「#翡翠ちゃんかわいい」が話題に

主人公のそのインパクトの強さは、多くの読者を虜にし、SNSでも話題になったという。

 前作は、キャラクターに対する意見が割れる作品でもありました。読書中と読了後でも、また見え方が変わる部分もありますし。でも一方で、読者に愛されたからこそ、男女を問わず、侃侃諤諤(かんかんがくがく)なキャラクター論に発展して、大いに盛り上がったんだと思います。
 多くの方が、SNS上で自然発生的に生まれた「#翡翠ちゃんかわいい」というハッシュタグをつけてツイートしてくれたように、やはりこの作品、キャラクターに対して、好意的なもの、そうでないものも含めて、読者の方からいろんな感想が寄せられ、性別などそれぞれの立場で、違った印象を与える作品なんだと実感しました。それにしても、ここまで話題になるとは思っていませんでしたけど(笑)。


▲遠田志帆さんによる表紙のラフスケッチ


▲いくつものカラー案が出された表紙デザイン

『invert』に潜ませた仕掛け

続編『invert』は、最初から犯人が判明し、犯人の視点から描かれている「倒叙ミステリ」だ。

 「倒叙もの」としては、ドラマ「古畑任三郎」(フジテレビ系列)が好きなんですが、やはり「探偵VS犯人」という対決構造、互いの探り合いや駆け引き、そのスリリングな展開こそ、「倒叙ミステリ」の魅力だと思います。
 どこをミステリの面白さと捉えるかは人それぞれで、例えば犯人の心理描写などを面白がる読者もいますし、それを描きたいという思いもあります。心理描写を克明に描くことで、物語の密度が増すこともわかっていますが、それを描き始めるとどうしてもそちらばかりに意識が向いてしまう。
 ですからこの『invert』についても、犯人と探偵の対決構造によるストーリーのドライブ感を損なうことなく、いかに犯人を描くか、そのバランスに配慮しながら執筆しました。
 一方で前作を読んでいるからこそ、『invert』を楽しめる仕掛けも用意しています。犯人の視点で主人公の翡翠を見ることで、読者の皆さんが、まるで初見で『medium』を読んだときの自分を犯人に重ね合わせるような、そんな感覚を味わってもらえたらなと。また前作同様、遠田志帆さんが描いてくださったイラストにも注目していただきたいです。
 このシリーズの執筆前から、「倒叙ミステリ」と、孤島や洋館などのクローズドサークルを舞台とした古典的な「本格ミステリ」、どちらも書きたいと思っていたので、次回はクラシックな「本格ミステリ」に挑戦したいですね。

「犯人当て」ではないミステリの面白さ

全3話からなる今作『invert』は、全話通じて、主人公が「解決編」として読者に語り掛けるシーンが登場する。

 これは米国の推理作家、エラリー・クイーンが開発した技法で、「読者への挑戦状」と言われます。読者に対し推理を促すもので、ミステリ作家としては、いつかは「読者への挑戦状」を作中に入れたい、という憧れがありました。
 でも、それを挿入しようとすると、どうしても物語が途切れ、いわゆる「神の視点」でそれを書かなくてはならない。いかに物語の流れを止めることなく、「読者への挑戦状」を差し込むか。そこで「古畑任三郎」の演出を小説に取り入れれば、物語の中にうまく溶け込ませることができるかなと。
 一方で、「挑戦状」は事件における情報を整理するという役割も担っています。「倒叙」なので、当然、犯人はわかっている。では一体、何が謎になるのか。
 ミステリにあまり慣れ親しんでいない読者からすれば、犯人が判明することが最大の謎だと思っている方も少なくありません。
 ですから主人公が出す「挑戦状」を通して、この事件において「解決するべき問題は?」、「必要な証拠は?」といったポイントを整理し、「この謎を解いてみてください」と読者に提示することで、犯人を当てるだけではない、ミステリの面白さを伝えたいという思いはありますね。

新作を心待ちにしている書店員、読者へのメッセージを聞いた。

 『medium』、『invert』どちらも、「こんな小説、読んだことがない」という読書体験を提供したいと思って執筆したので、通常の読書では味わえない物語、構成になっています。読み終わった後に人にもすすめたくなるし、その人の反応を見たくなる。さらに読んだ人同士で、語り合いたくなる作品だと思うので、ぜひ多くの方におすすめしてもらいたいですね。


『medium 霊媒探偵城塚翡翠』

四六判上製/386㌻/定価1870円

『invert 城塚翡翠倒叙集』


四六判上製/434㌻/定価1925円

相沢 沙呼(あいざわ さこ)

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビューし、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいで活躍。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編 第1位など5冠を獲得した。

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