日本実業出版社は1950年に広島で創業し、現在は大阪に本社、東京に東京本部を置く。ビジネス書・実務書を中心に刊行し、最近ではBS・PLを読むのが面白くなる『決算書の比較図鑑』、コロナ明けでニーズが高まる『こうして社員は、やる気を失っていく』といった商品の拡販に注力している。
【本紙増刊B.B.B 6月号掲載】
同社はビジネス書を中心に1年間に約80点の書籍新刊を刊行し、稼働点数は約900点。累積刊行点数は約6000点に達する。
ジャンルはビジネス書や実務書が中心だが、この頃は韓国イラストエッセイの翻訳書ソルレダ著『わたしの心が傷つかないように』(四六判並製、1540円)や、坂本尚志著『バカロレアの哲学 「思考の型」で自ら考え、書く』(四六判並製、1870円)、中川右介著『プロ野球「経営」全史 球団オーナー55社の興亡』(四六判並製、1980円)など、一般書の売れ筋も増えている。
それでも、同社刊行物の強みについてマーケティング部・渡辺博之部長は「一番の強みは働く人たちの仕事に役立つ本」と述べる。特に、経営実務書には力を入れており、ロングセラーを多く持つ。
今年3月発行の宮武貴美著『新版 総務担当者のための産休・育休の実務がわかる本』(A5判並製、2420円)は、今年度から施行される「育児・介護休業法」の改正内容を盛り込み、すでに4刷1万部だ。渡辺部長は「この時点で新制度についてここまで詳しい本はありませんでした」と述べる。これまでも、消費税やマイナンバーなど、制度や法律の改訂に迅速に対応してベストセラーを出してきた。
とことんかみ砕いてロングセラーに
また、今年1月に刊行した『この1冊ですべてわかる 経理業務の基本』も3刷1万部と好調だが、「この1冊ですべてわかる」を冠した実務書シリーズは2007年の『広告の基本』を皮切りに、『会計』『コーチング』など30点刊行し同社の看板シリーズに成長。
野崎浩成著『教養としての「金融&ファイナンス」大全』(四六判並製、2750円)も今年3月に発行し4刷1万2000部に達しており、「教養としての」シリーズは2017年の『教養としての「税法」入門』以来5点目になる。
第一編集部・角田貴信編集長は編集方針について「難しいことをとことんかみ砕いてわかりやすくする。そのために著者と何度もやり取りしています」と説明する。
最近では、昨年11月に発行し6刷3万部と好調な矢部謙介著『決算書の比較図鑑』(A5判並製、1760円)を、「新刊時も売れ行きは良かったが、都市中心で展開されていない書店も多いので、総会シーズンのタイミングで広げたい」と勝木俊宏営業部長。
また、松岡保昌著『こうして社員は、やる気を失っていく』(四六判並製、1760円)は5月1日の発売から約1カ月で3刷約2万部と勢いがあり、メディアからの取材も多く今後パブリシティが予定されていることから「書店の立地や地域に関わらず初動が良かった。チームを立ち上げ、今季初の増売企画として取り組んでいる」(勝木部長)という。
システムのクラウド化など課題
同社の基幹システムは、2012年にそれまでのオフコンから、光和コンピューターの「出版ERPシステム」に入れ替えた。システム選定に当たり数社から提案を受けたが「出版社に特化しており、操作性の良さや帳票類の汎用性が高かったので選びました」と小林利行業務部長は述べる。
販売・在庫管理と製作・原価管理のシステムを導入し、営業部門や自社倉庫の「朝霞流通センター」にある端末で利用。販売や在庫状況をCSVファイルにして社内Webにあげることで、編集部門も閲覧できるようにしている。
今後、この機能を拡張機能として組み込むことを予定しているほか、システムのクラウド化も課題だ。「サーバーのメンテナンスが不要になるほか、営業担当者が出先でリアルタイムの情報を確認したり入力できるようになります。今後の課題です」(小林部長)と考えている。
株式会社日本実業出版社
創 業:1950年10月1日
資本金:7000万円
代表者:杉本淳一
所在地:
大阪本社 〒541-0052大阪市中央区 安土町3−3−9 田村駒ビル
電 話:06-6262-5165(代表)
東京本部 〒162-0845東京都新宿区 市谷 本村町3−29 フォーキャスト市ヶ谷
電 話:03-3268-5161(代表)
コメント