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第171回「芥川賞・直木賞」贈呈式 朝比奈さん、松永さん、一穂さんが登壇

左から一穂さん、松永さん、朝比奈さん

 日本文学振興会は8月23日、第171回芥川龍之介賞・直木三十五賞の贈呈式を都内で行った。芥川賞は、朝比奈秋さんの「サンショウウオの四十九日」(新潮5月号)と、松永K三蔵さんの「バリ山行」(群像3月号)の2作品が、直木賞に一穂ミチさんの『ツミデミック』(光文社)が選ばれた。

 初めに、日本文学振興会理事長の飯窪成幸氏が受賞者3人に正賞の時計と副賞の目録を贈呈。選考委員を代表し、奥泉光氏が芥川賞について、宮部みゆき氏が直木賞について祝辞を述べた。

 奥泉氏は、「小説の最大の魅力は小説的な語り。語りの力が今回の二人は出色だった」とし、二人の女性の視点から語られる朝比奈さんの作品について「一人称の小説は、直接語られないことの奥に何かが響いてくる。大変素晴らしい語りだと感心した」と称えた。松永さんの作品について「山岳小説は世の中にたくさんあるが、今作はアルピニズムを描いた作品ではなない」とし、「登山の過酷さとリアリティを的確に描いた力作」と賞賛した。

選考委員の奥泉氏

 宮部氏は、一穂さんの作品について、選考委員の中で「反対意見もなく、私も一押しだった」とし、「一日一本味わうように読んでほしい」と述べ、「素晴らしい短編の名手。これからもどんどん書いて私たちをハラハラさせてください」と期待を込めた。

選考委員の宮部氏

 朝比奈さんは、これまでさまざまな賞で評価されていることを振り返り、「何の因果か小説を書くようになり、(医師として勤務していた)病院も辞め、受賞を自分のこととして喜びたかったけれど、光栄さは一瞬で通り過ぎてしまった」と吐露。ただ、「祝福されているのは僕ではなく小説自体や登場人物と気付くと、自分が何者でもなく、いち人間として書いたのだと実感し、かすかな喜びが体の底から湧いてくる」と独特の感情を表現し、「何であれ感謝している、何であれ書き続ける」と締めくくった。

正賞を手に笑顔を見せる朝比奈さん

 母親に薦められて14歳で『罪と罰』を読み、自分の罪と罰を書きたいと思って小説家を志した松永さんは、文学部を目指して浪人していた時、父親に「芥川賞をとっても食べていけないぞ」と言われたというエピソードを紹介した。当時、自身は考えてもいなかったことでビックリしたとしながら、「25年経って候補に選ばれた」とし、「父はいつも芥川賞よりも大きなものを与えてくれる」と感謝を述べた。

受賞の喜びを語る松永さん

 一穂さんは、小学生の時に「『なにゆえもがき生きるのか』というファミコン『ドラゴンクエストⅢ』のセリフに出会い、大人の本気を見て衝撃を受けた」とし、その問いに対し、「自分の生身の人生ではなかなか打ち返せないが、小説という形で打ち返したくて書いてきた」と明かした。最後に、編集者や友人、両親への感謝の意を述べた。

周囲への感謝を述べる一穂さん

 飯窪理事長があらためて登壇し、3作品についてそれぞれ感想を述べて締めくくった。

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