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中央公論新社『婦人公論』 月刊化リニューアルで部数伸長 読者ニーズとらえ、60代超のファン拡大

売れ行きが好調な『婦人公論』最新号

 中央公論新社が発行する雑誌『婦人公論』の売れ行きが好調だ。1916年の創刊以降、幅広い世代の読者に読み継がれてきた同誌だが、近年は60代超の女性たちをメインの読者に位置づけ、より読み応えのある内容にシフト。2022年1月には、読者のライフスタイルに合わせて、月2回発行から月刊化にリニューアル。それとともに、「じっくり読める」多彩な誌面づくりを進めている。先ごろ発表された日本ABC協会の雑誌販売部数(22年1月~12月発売号)によると、同誌の実売部数は約9万9000部となり、前期比32・26%増と大きく伸びている。雑誌が売れないと言われる中、好調の裏側を同誌編集長の三浦愛佳氏に聞いた。【増田朋】

「新たな誌面づくりにチャレンジしたい」と語る三浦編集長

 『婦人公論』は1916年に月刊誌として創刊。98年に大判・ビジュアル化を図り、月2回刊行として、より幅広い読者を獲得してきた。創刊106周年を迎えた2021年、コロナ禍の巣ごもり需要や高齢者の外出自粛なども重なって、同年下期から部数も上向きに。また、読者から「多彩なコンテンツを、時間をかけてじっくり読みたい」といったニーズもあったことなどから、月1回発行への移行を検討。読者のボリュームゾーンが上昇する中、表紙やタイトル、内容についても見直し、「より一層その世代にフィットさせていく作業を進めた」(三浦氏)という。

 そして、22年1月から月刊化し、毎月15日の発売(定価780円・税込)に変更。それまでと比べてページ数も増やし、判型も少し大きいA4正寸判に変えた。文字も拡大し、高齢者が読みやすいよう誌面のレイアウトも工夫している。

読者が「私の好きな雑誌」と認識

 読者層をしっかりと意識しながら、編集方針から特集テーマ、連載陣などもてこ入れしてきた。「100歳まで生きる前提で、女性たちの悩みに共感し、前向きに転換」することを掲げ、結婚、親子、人づきあいといった定番のテーマから、ひとりの老後、シングルのお金、健康など人生100年時代ならではの問題などを取り上げる。三浦氏は「みんな長生きすることでの不安やコロナ禍での停滞感、ロールモデルの不在など、さまざまな思いを持ちながら生きている。そんな女性たちの『知りたい』という思いや悩みに向き合いながら、未来への希望を示したい」と考えている。

 連載では、著書『気がつけば、終着駅』(中央公論新社)が30万部近いベストセラーとなっている佐藤愛子さん、同じく著書の『老いの福袋~あっぱれ!ころばぬ先の知恵88~』が28万部となった樋口恵子さんら〝長生きの先輩〟が書くコラムが大人気。10月号からは俳優・草笛光子さんの新連載もスタートする。

 月刊化を機に、より一層「じっくり読める」多彩なコンテンツを充実させたこともあって、その効果が部数にも表われている。読者層も60、70代をメインに、50代、80代がそれに迫る勢いで増えておりターゲッティングに成功。「月刊化でその傾向は強まっている」と分析する。読者からは「コーヒーを飲みながらじっくりと雑誌を読む時間が、私の一番大切な時間です」といったうれしい反応も多いという。「コロナ禍もあって、(月刊の方が)シニアのライフスタイルに合っている。読者の皆さんがこれまで以上に『私の好きな雑誌』と認識してくれるようになった」(三浦氏)と、固定ファンの広がりを実感している。

定期購読者が1万人超に

 今後、このファンづくりに一層力を入れる。10月には読者会員組織「婦人公論ff倶楽部」を立ち上げる。現在、雑誌のウェブサイト「婦人公論.jp」も運営し、最近では月間PVが3カ月平均で1000万を超えるなど、こちらも雑誌とともに伸びている。このサイトに新たに読者専用のページを設け、オリジナル記事が読めたり、プレゼント応募、講演会への参加などができる形にする。

 さらに、月刊化によって定期購読者の数が増えているのも、ファン拡大の証拠だ。月刊化と誌面刷新の効果で定期購読する読者も一気に増え、今では1万人を超えている。

 その一方、やはり全国各地の書店、スーパーやコンビニなど、『婦人公論』と読者とのリアルなタッチポイントを維持することも重要だと考えている。例えば、書店ではバックナンバーと最新号の2号を同時展開することで、2号ともに売り上げが伸びるという結果も出ている。「各号で特集も違うので、2号分を見られると、新たな読者も手に取りやすいのでは」と期待する。2号展開してもらえる店舗には販売台・POPも用意している。

強みは類似誌がない「総合雑誌」

 月刊化のリニューアルで部数も大幅に伸び、その後も好調に推移している。三浦氏は「まずは10万部雑誌として定着したい」と先を見すえる。そのためにも「誌面に登場する次のスターの発掘と、新たな読者の獲得に力を入れたい」と語る。「創刊から100年を超える歴史を持つ『婦人公論』は、いつもその時代に合わせて形や中身を変えてきた。しかし、その長い歴史に裏付けられた私たちにしかできない誌面づくりの『技術』があり、それはこれからも守っていく」と自信を持つ。

 そのうえで、「一般的に女性シニア誌とカテゴリー化される『婦人公論』だが、取り上げている情報をみれば、生き方や美容、健康から食品、ファッション、金融、スポーツなど本当に多彩で、シニア誌というよりは他に類似誌がない『総合雑誌』と言える。これからも自分の人生を充実させたいという思いを持つ女性のための総合雑誌として、伝統を生かしつつ、新たな誌面づくりにチャレンジしていきたい」と話している。

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