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講談社「本田靖春ノンフィクション賞」「科学出版賞」決定 贈呈式開催

左から受賞した伊澤さん、椛島さん

 講談社は9月14日、「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」(第45回)、「講談社科学出版賞」(第39回)の贈呈式・祝賀会を東京・千代田区の東京會舘で開催した。ノンフィクション賞は伊澤理江さんの『黒い海 船は突然、深海へ消えた』が、科学出版賞は椛島健治さんの『人体最強の臓器 皮膚のふしぎ 最新科学でわかった万能性』が受賞した。

あいさつする野間社長

 冒頭、講談社・野間省伸代表取締役社長があいさつに立ち、「3年ぶりに多くの皆さまをお招きして贈呈式を開催することができた」と話し、伊澤さんの作品については「ノンフィクションでありながら、上質のミステリー小説を読んでいるような気持ちになった」とし、次作への期待についても語った。椛島さんの作品については、「最新の皮膚医学の知見を基に、科学的に紹介した、この賞にふさわしい本」とし、関係者と選考委員への感謝の言葉を伝えた。

 選考委員の原武史氏は伊澤さんの作品について、「昨年と違って満場一致だった」とし、5月に第54回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しているのでダブル受賞となるが、そのことも「昨年と違って問題にする声が上がらなかった」と話した。

 また、漁船の沈没の原因が、アメリカの潜水艦による衝突というのが蓋然性としていちばん高いという結論に至るプロセスが、「政治学の学術作品にも通ずる」として、「伊澤さんがもし政治学者だったら、おそらく超一流だったであろう」と称えた。

 選考委員の黒田玲子氏は椛島さんの作品について、「専門用語がいっぱい出てきて、わからないと言われるのではないか」と思った部分もあったとしつつ、「読み進めていくと面白くて引き込まれる」と話した。

 「哺乳類で全身に汗をかくのは人と馬しかいないとか、サイエンスに基づいて面白い話が書かれている」と笑顔で楽しそうに講評について語り、「この素晴らしい本を読んで、科学者になりたい人、興味を持つ人が増え、科学が衰退しないよう盛り上げていきたい」と期待を込めた。

「ジャーナリストにしかできない仕事」

 受賞のあいさつに立った伊澤さんは、「船舶や事故調査の専門家でもない一ジャーナリストの私が取材を続けて何を掴めるのだろうか」と、取材を続けるなかで無力感を覚えていたこともあったと吐露。そんな折、長く取材に協力してくれていた専門家に「あなたは散らばった点と点をつなぎ、問題を明るみにした。それはジャーナリストにしかできない仕事だ」と言われ、「志を持って仕事をしていくうえで、忘れがたい言葉となった」と話した。

 また、ふだんは仕事が2、家庭が8の割合だが、「この作品を書いている間は10対ゼロになっていた」と話し、幼い子どもたちを含む家族の犠牲のうえに今作が書かれていたことを明かした。また、「実績のない自分に、ほとんどの人が覚えていない古い事故の話を書かせてくれた」と編集者への感謝を述べた。さらに、9カ月で9刷、今回で4つ目の受賞となったと、喜びを語った。

 椛島さんは冒頭で、「皮膚が大好き」と話し、皮膚は面白くて〝大切な臓器〟で、「いつか皮膚の重要性を伝えたいと思ってはいた」が、臨床や研究に日々追われ、なかなか機会がなかったと語った。そんななか、編集者から「ブルーバックスで本を出しませんか」と声が掛かったという。もともと読書が好きで講談社のブルーバックスシリーズを読んでいた椛島さんは、ふだんなら断ってしまいそうなところを引き受けたと明かした。

 また、コロナ禍で感じていたのは、海外の人に比べて、日本の人の多くが「マスコミの情報を鵜呑みにして混乱している」ということ。そういう意味でも一般の人に向けてわかりやすくサイエンスの本を書く必要性を感じていたと話した。

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